タマネギの育て方

都会からリタイアして地元の田舎に戻り始めた家庭菜園、少しずつ学んだ野菜の育て方のコツをまとめてみました。

 1.タマネギ栽培のキモとコツ

タマネギとは

タマネギ(玉葱)は、ネギ属の多年草ですが、園芸上は一・二年草として扱われます。9月頃に種まきをし、苗を育てて、10月下旬から11月上旬にかけて定植し、収穫するのは翌年の6月頃です。栽培に長い期間かかりますが、逆に長期保存も可能で、6月の収穫後、軒下など日が当たらず風通しがよくて、雨が当らない場所に吊るしておけば、冷涼な長野県であれば、翌年の3月頃まで食べられます。

【品種】
寒い地域では、冬の間は野菜が採れないので、長期貯蔵できるジャガイモや大根、タマネギは、春先までの貴重な保存食となります。そのため、できるだけ長く貯蔵したいので、貯蔵性のよい中晩生種のタマネギを育てるのが一般的です。「泉州中高黄」が人気ですが、より貯蔵性がいいのは「ネオアース」。ただし、しまりが良すぎて皮が剥きにくいのが難点です。ネオアースはF1種ですが、固定種の「ノンクーラー」も貯蔵性が高く、3月まで貯蔵できます。固定種はF1種に比べて種が安いので助かりますが、玉の育ち(大きさ)に多少ばらつきが出やすいです。
温かい地域では、より早く収穫でき、生色でも食べられたり、柔らかい、早生・極早生種の栽培も盛んです。苗を買う人は、それぞれ半分ずつ作ってみるのもいいかもしれません。
【連作障害】
連作は可能ですが、できれば1~2年あけた方が無難です。そもそも、他の野菜を輪作を避けるために別な場所で育てようとすると、タマネギも必然的に違う場所で育てることになりますよねぇ(汗)。
【病害虫】
比較的、病害虫の心配は少ない野菜です。しかし、水はけが悪いと、べと病やさび病が発生しやすくなりますので、高畝栽培をする必要があります。どうしても、アブラムシによる萎縮病や、貯蔵中に薄皮の下に黒いカビが発生する灰色腐敗病が発生してしまいますが、大した被害にはならないし、黒カビも皮一枚剥けば済む話なので、私は放っておきます(汗)。
消毒するか、洗って食べるか、どちらを選ぶかは人それぞれですね。タマネギのこうしたウィルス性の病気には、殺菌剤のジマンダイセンがおすすめです。

 2.種まきから育苗

沢山のタマネギを収穫したい人は、自分で種を蒔いて苗を育てた方がお得です。タマネギの種は、品種や量にもよりますが、1袋で300円~500円ほど。入っている量にもよりますが、芽出しに失敗しなければ、種1袋で300~500本くらいの苗が採れます。いい苗を選んでも、200~300苗は固い!。苗を買うと、1束100本で800円~1,000円くらい。300本、500本と買ったら、何千円にもなってしまいます。ただし、生食用の赤・白タマネギや、貯蔵用と複数の種類のタマネギを育てたい人は、苗を買った方が早いでしょう。逆に、50本もあれば十分という人は、お店に頼んで苗の束を分けて売ってもらうか、他のお客さんと分け合いましょう(笑)。

なお、自分で種から苗を育てる場合、問題となるのが、芽出しと、定植時の苗の大きさ。ネギの種は、芽出しが難しく、失敗すると必要な数の苗が得られなくなってしまいます。発芽までは1週間ほど、十日経っても芽が出なかったら蒔き直すことになりますが、既に種まきの適期が過ぎてしまっていることも・・・(汗)。次の課題は、定植時の苗の大きさ。タマネギの定植時期は、10月下旬から11月上旬頃ですが、その時に植える苗は、根元の太さが5mmくらいが理想的。種を早蒔きしたり、育苗中の気温が高いと、定植時期までに苗が大きくなり過ぎたり、逆に細くて小さい苗しか育たなかったりということが、往々にしてあります。苗が太く大きいと、抽苔(ちゅうだい、トウが立つこと)して芯のあるタマネギになってしまいますし、苗が細く小さいと、生育不良で大きなタマネギが収穫できません。その点、苗を買うなら、自分の理想の太さ・大きさの苗を選んで買うことができます!。

【気象環境】
発芽・生育適温は、15~20度。冷涼な気候を好み、耐寒性が高い。一般には、秋まき春どりで栽培しますが、極寒地では苗が越冬できないので、春まき夏どり栽培になります。球の肥大は、気温というより、日長の影響が強いようです。早生種では12時間、中晩生種では13時間くらいで肥大が始まります。
【播種の適期】
播種(種まき)の時期は、中間地・寒地では9月上旬~中旬、暖地では9月下旬です。早蒔きすると苗が大きく太くなり過ぎてしまい、遅いと小さく細い苗になってしまうので、自分の住んでいる場所の、種まき適期を知ることが大事です。まずは、地元の先達に教えを乞いましょう。当地では、一説ですが、『9月13日の午後』に種まきするとよいと豪語する人がいます(笑)。
タマネギの種まき・定植・収穫時期
 
【土壌・施肥】
やや粘土質で、排水性が良い場所がベスト。長野盆地では、未だに田んぼで、米とタマネギの二毛作をする農家も多いです。
タマネギは肥料を好みますが、肥し過ぎると首のしまりが悪くなって、貯蔵性が低下します。基肥(元肥)は控えめにし、様子を見ながら追肥するようにしましょう。ただし、水不足や肥料不足、特に窒素分が足りないと、抽苔しやすくなるので、注意が必要です。
【種まき】
種1袋で、約1~1.5坪ほどの広さの苗床(蒔き床)を作ります。排水の悪い畑では、畝を立ててください。一般的に野菜の苗作りでは、無肥料の培土に種を蒔きますが、タマネギの苗は肥料を要します。種まきの1~2週間前に、石灰と肥料を漉き込んだ蒔き床を作りましょう。
種の蒔き方は、ばら蒔きも可能ですが、間引きや草取り作業が手間になるので、すじ蒔きがおすすめ。5~10cm間隔の蒔き溝を作り、十分灌水してから、種を5mm~1cm間隔で蒔いていきます。
タマネギの苗床タマネギの種子発芽は、嫌光性です。しかし、覆土が厚いと発芽し難くなってしまいます。5mmくらい薄く覆土し、軽く鎮圧したら、灌水後、新聞紙や稲わら、寒冷紗を掛けて、遮光と乾燥防止を図ります。
発芽までの日数は、気温や覆土の厚さにもよりますが、4日から1週間ほど。発芽が揃うまでの10日間ほどは、必ず毎日灌水します。ただ、新聞紙は毎日の散水時に剥ぐのが面倒だし、藁は散らかるし、寒冷紗は汚れます。そこで私は、雑草対策も兼ねて、覆土した上に、鶏糞と籾殻を蒔いています!。
なお、タマネギの種は短命なので、買った種はその年に使い切り、余っても、翌年はケチらず新しい種を買いましょう。古い種は、よけいに芽出しを失敗する可能性が高いです(もちろん絶対に発芽しない分けではないので、発芽したらラッキー程度で蒔いてみるのはアリです)。
【育苗】
丈夫で、長さ・太さが揃った苗を育てるために、育苗の途中で一度、葉を半分ほどの長さに切り揃える方法もあります。天気が良すぎて、苗の生育が進み過ぎた場合にも有効な手段ですが、長野県辺りだと秋の深まりが早く、むしろ苗の生育が遅れがちになるので、私は葉を切り詰める作業はしたことがありません(汗)。

 3.定植から収穫まで

購入した苗は、消毒がされているし、大きさ・太さも揃っていて、安心です。ただ、種から育てた自分の苗は、愛情もひとしお。定植する際は、まず苗床を灌水し土を緩めておいてから、スコップで根を傷めないように苗を掘り起こします。

定植に適した苗の大きさは 20cm~25cm、株元の太さは 5mm前後が理想的。NHK「趣味の園芸」で、藤田先生は鉛筆くらいの太さが理想的と話していましたが、7mmを超えてくると抽苔しやすくなるので、鉛筆以上の太さの苗は、避けた方が無難です(汗)。ちなみに鉛筆の太さは、JIS基準で8.0mm以下と決まっていて、トンボ鉛筆は7.7mm、三菱鉛筆では7.2mm(何れも誤差±0.2mm)だそうです。鉛筆より少し細いくらいが目安ですね!。

ちなみに、苗を買いそびれて、貧弱な苗か、徒長した大苗しか残っていなかった場合には、大苗の方を選びましょう。小さすぎる苗からは、よいタマネギは収穫できません。一方、徒長した大苗の場合には、葉を20~30cm程度に切り詰めてから定植すると、あらかた抽苔することなく、ちゃんとしたタマネギを収穫することが出来ますよ!。

【植え付け】
定植の適期は、長野市辺りでは11月5日~20日と言われています。一日の最低/最高気温が、5/15度から0/10度に下がってきて、苗の生育が滞り始める頃です。
タマネギは肥料を好みますが、肥し過ぎると首のしまりが緩くなって、貯蔵性が低下します。施肥は、翌年、球が肥大し始める頃までの追肥で事足りるので、基肥は控えめに。
タマネギ苗の定植苗を植える間隔は、10~15cm。広く植えると雑草取りが大変だし、狭すぎると球の肥大に影響します。育てる品種の球の大きさに応じて、適宜調整しましょう。苗を植える深さは、株元の膨らんだ白い部分の半分程度が土に隠れるくらいの浅植えとし、深植えは厳禁。霜柱の立たない暖地なら、根が隠れる程度の浅植えも可能ですが、寒冷地だと霜柱で根が浮き上がってしまうので、少し深めに植え付けます。一株ずつ、大きな穴を掘って苗を縦に埋めるに越したことはありませんが、数を植えるには面倒です。斜めに土を一列に鋤いた所に、苗を畝に立て掛けるようにして、根に土を被せていくのが簡単です。
雑草除けに、タマネギ用の穴あきマルチを使うのもアリですが、家庭菜園でお金を掛けるのは勿体ないので、私は定植後に籾殻を撒くようにしています。籾殻を撒いておくと、雑草除けと乾燥防止、霜柱による苗抜けの予防効果も期待できます。籾殻燻炭なら、地温上昇も期待できるので、なおさら理想的ですが、燻炭作りが手間なので・・・(汗)
【管理】
定植後の管理は、草取りのほか、冬には霜柱で根が浮き上がってしまうことがあるので、その場合は手で根元の土を押さえ付けるか、株の間を土踏みをして、根を土に密着させるようにします。
追肥は、定植の1か月後に1回と、年明け2月末までに1回だけします。3月以降に追肥すると、首のしまりが悪くなり、貯蔵性が落ちます。

抽苔と分球

タマネギのトウ立ち4月下旬になると、抽苔(ちゅうだい=トウ立ち)するタマネギが出てきます。抽苔する原因は、苗が大きく育ってから冬の低温に当たったため、花芽分化をしてしまったからです。トウを立たせないためには、適切な時期に種を蒔き、定植する前に苗を大きくし過ぎないことが大切です。また、早蒔きし過ぎて、苗が大きくなり過ぎると、分球(裂球、玉割れ現象)も起こります。

タマネギの分球そうは言っても、全部が全部、抽苔せず、分球も無いなんてことは、滅多にありません。トウが立ったり、分球したタマネギは、5月になってそこそこ球が肥大してきたら、早めに収穫して、「葉玉ねぎ」として美味しく頂いてしまいましょう!(笑)。抽苔したタマネギでも、真ん中の固くなった芯の部分を除けば、食べるには問題ありませんが、大きくなると芯の部分ばかりになってしまうので、若いうちに収穫します。

収穫

葉玉ねぎタマネギの収穫期は、暖地の早生種だと4月頃、一般地・寒冷地の中晩生種だと5月中旬から6月中旬ごろ。ただ、早めに収穫していただく「葉玉ねぎ」も、柔らかくて美味しいです。まだ球が小さいので、葉玉ねぎで採り過ぎると、貯蔵に回す分が少なくなってしまったりして・・・(汗)。

葉玉ねぎタマネギの葉(茎)が、半分以上、7~8割倒れたら、収穫適期です。ただし収穫後に、収穫したタマネギを干したいので、2~3日晴天が続く日を見計らって収穫します。しかし、地域や年によっては、梅雨入り後に収穫となる場合もあります。収穫前と収穫後の乾燥具合は、その後の保存性に影響するので、この時期の晴れ間は、とても貴重です。

また、よく熟した甘いタマネギにするには、出来るだけ収穫を遅らせた方がいいので、葉が完全に倒れるまで、人によっては葉が全部倒れてから1週間も収穫を待つことがあります。しかし、収穫が遅れると、それだけ保存性が低下しますので、見極めが難しいところです。

貯蔵

タマネギの収穫収穫したタマネギは、雨が降らなければ1~3日間、畑に並べて乾かします。

その後、ハサミを使って、根をギリギリまで短く刈り、葉は珠元から20cm位のところで切ります。根切りをした方が、貯蔵性がよくなると言いますが、私の経験上、あまり変わらないような気がします。それより、根を付けたままだと残った土が散らかるので、切ってしまった方が無難です。

タマネギの吊るし方球の大きさを見繕い、4~5球ずつ束ね、残した葉の部分をビニール紐や太い麻紐で結び、2束を連結させます。それを、軒下や畑の小屋など、雨が当たらず風通しの良い場所で、梁に渡した竿などに吊り下げ、貯蔵します。冷涼な長野では、3月まで保存できます。

 


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