暖房器具ランニングコスト対決、エアコンとファンヒーターで安いのはどっち?

ファンヒーターは灯油を入れるのが面倒。しかしエアコンは電気代が高くつきそう。そこで、どっちの暖房器具のランニングコストが安いのか、勝負比較してみることに!

新着記事 ページの情報を2022年モデルに更新しました(2022/11/6)。
関連ページ、「暖房器具のランニングコストを比較、安いのはどれ?」、「石油ファンヒーターの選び方、比較して賢く選ぼう!」、「エアコンのランニングコスト,電気代は幾ら?」も、ぜひご覧ください。

 1.電気vs灯油vsガス 熱効率対決!

電気・灯油・都市ガスの発熱量、暖房で使うのにお得なのはどれ?

まず最初に気になるのは、そもそも暖房に使う燃料は、電気・灯油・ガスのうち、どれが一番効率的なのでしょうか?。

熱量の計算では、国際的には「J(ジュール)」という単位が使われます。熱量以外のエネルギー量などにも使われる、とても基礎的な単位で、ウィキペディアによると、『1ジュールは、標準重力加速度の下でおよそ 102.0グラム(小さなリンゴくらいの重さ)の物体を 1メートル持ち上げる時の仕事量』です。しかし、日常生活でこの単位に出会うことは滅多に無いので、1ジュールと言われてもピンときません…(汗)。そこで、日常よく目にする、「cal(カロリー)」の単位に置き換えて、考えてみましょう!。『1カロリーは、1グラムの水の温度を標準大気圧下で1度上げるのに必要な熱量』です。しかし、何度の水で定義するかにより様々な学説が生まれてしまい、現在、学術文献でこの単位が使われることはありません。とは言え、私たちの日常生活には全く支障がないレベルの話です(笑)。ここでの単位変換には、1J ≒ 0.239cal を使います。

電気・灯油・ガスといったエネルギーを消費して得られる最大の熱量は、学術的に計算で示されます。ただし、ガソリンにもレギュラーとハイオクの様に品質の違いがあるように、灯油やガスにも品質の違いがあり、一定とは限りません。ここでは、以下の値を使用することにします。

1単位量当り熱量 熱量当り単価 備考
電気
(1 kWh)
3.6 MJ/kWh
≒ 860 kcal/kWh
約 42.1 円/cal
(24 kcal/円)
東京電力の従来の規制料金体系(従量電灯B)で算定。
設定単価は 36.2円/kWh。
灯油
(1 L)
36.49 MJ/L
≒ 8,721 kcal/L
約 13.9 円/cal
(72 kcal/円)
石油連盟の石油製品の標準発熱量より。
設定単価は東京店頭価格(2022/10)より 121.5円/L。
都市ガス
(1 m3
45 MJ/m3
≒ 10,755 kcal/m3
約 19.2 円/cal
(52 kcal/円)
東京ガスの都市ガス13Aで算定。
設定単価は 206.6円/m3
※ 1M(メガ)は1k(キロ)の1,000倍、1kは1の1,000倍の単位。
※ 設定単価は「暖房器具のランニングコストを比較、安いのはどれ?」のページで計算した2022年11月現在の単価を使用。

この計算によると、1カロリーの熱量を得るためには、電気だと約 42.1円かかりますが、灯油だと約 13.9円で済むため、電気を暖房に使うのは、灯油より3倍もコストが掛かることになります!。都市ガスは、灯油の4割増しくらいのコストが掛かります。

つまり、暖房に使うエネルギー源として、電気・灯油・ガスで比べると、灯油 > 都市ガス >> 電気 の順に、お得だということが分かります!。もし、手元に石油ストーブや石油ファンヒーター、ガスストーブやガスファンヒーター、電気ストーブやカーボンヒーター等があったとしたら、2022年11月現在では、石油ストーブや石油ファンヒーターを使うのが、最もコストを掛けずに部屋を暖めることが出来るはずです(極端に暖房器具が古かったり、燃焼機関が汚れていて燃焼効率が悪い場合などは別です)。

エアコンの省エネ性能の凄さ!

ただ、ここで注意しなければならないのが、エアコン省エネ性能です!。エアコンは、単に電気を熱に変換しているのではなく、外気(空気)が持っている熱を取り込む「ヒートポンプ」という仕組みを利用しています。これにより、エアコンは電気をそのまま熱に変換するより、遥かに高い省エネ効果を生み出しています。その省エネ効率を示す指標が、定格能力を定格消費電力で割った「COP(エネルギー消費効率)」や、より実使用を想定して計算した「APF(通年エネルギー消費効率)」という数値です。

1円の電気で得られる発熱量は、1円の灯油で得られる発熱量の 3分の1 しかありませんが、エアコンの省エネ性能が3倍になれば、灯油と同じコストで同じ発熱量が得られることになります。エアコンの省エネ性能は近年、飛躍的に高性能化しており、年々ますます高くなっています。例えば、三菱電機のルームエアコン霧ヶ峰の次世代プレミアムモデルである「FZシリーズの省エネ性能」を見ると、通年エネルギー消費効率(APF)は最低でも5.6(大型9.0kWクラス)、最高では7.8(小型4.0kWクラス)となっていて、ここ数年で1割前後もアップしています!。仮に、平均APF値=6.7とすれば、逆にエアコンの1円あたり発熱量は、灯油の2.2倍も得られることになります。つまり、同じ熱量を得るためなら、エアコンを使えば、電気代が灯油の半額以下で済む計算です!。

したがって、エアコンの省エネ性能を加味したうえで、暖房に使うエネルギー源として電気・灯油・ガスのお得度を比べると、エアコン >> 石油ストーブ > 都市ガスストーブ >> 電気ストーブ の順番になります。

ただし、エアコンにも弱点があります。関東以南など暖かい地域であれば問題ないのですが、外気温が低いと、ヒートポンプの熱交換率が低下し、その省エネ性能が発揮できなくなってしまいます。また、室外機が結露すると、一般的な多くのエアコンの場合、エアコンは室内の暖まった空気を利用して室外機の霜取り運転をしますが、この間は暖房が停まってしまいます…。こうした問題を解消しようと、各メーカーが研究をして寒冷地仕様のエアコンを開発。今では『外気温-25℃まで暖房運転可能』と言われていますが、実際使うとなると、マイナス10℃を下回ってくると、エアコンでは体感的に十分な暖かさが得られないと感じる人が多いようです。雪の多い地域で、室外機が雪に埋まってしまう場合も、エアコンは使えませんね(汗)。

 2.狭い居室での小型暖房機対決!

まずは、4畳半から6畳くらいの、子供部屋や勉強部屋、仕事部屋等の暖房を想定します。子供部屋で灯油は使いたくないという考え方もあるとは思いますが、ここはあくまでランニングコスト比較なので、その点はご容赦ください。

比べるのは、小型エアコンと、小型の石油ファンヒーター、小型の石油ストーブ、電気ストーブ(遠赤外線ヒーター)の、4つの暖房器具。ただし、エアコンとファンヒーターは温度調整機能があるため使用環境によって消費エネルギー量は大きく変化します。また、電気ストーブは部屋全体を暖める為ではなく、手軽に暖を取るための器具なので、他の機器と単純にその暖房能力を比較することは出来ません。それぞれの使用状況を加味した上で、参考にしてください。

① 小型エアコン

平成4年11月6日現在、価格.comの“エアコン・クーラー”の「人気売れ筋ランキング」で第1位の商品は、出力2.2kWタイプ(暖房では木造5畳・鉄筋6畳用)のダイキン「S22ZTES」(2022年モデル、最安値で4万円台から)です。

このエアコンの暖房消費電力は470W(130~1,280W)なので、定格出力時の1時間当たりの電気代は 約 17.0円/h(=0.47kW×36.2円/kwh)となります。もちちろん、お住まいの地域の外気温や設定温度、住宅の構造等によって、エアコンの消費電力量は変化しますので、あくまで目安にしかなりません。ちなみに、MAXパワー(最大出力=1,280W)でフル稼働したとすると、1.28kWh×36.2円/kWh=約 46.3円/hになります。


② 小型石油ファンヒーター

コンパクト石油ファンヒーター(木造7畳・コンクリート9畳用)で、価格.comにおける今の売れ筋人気の製品は、ダイニチの「FW-2522NE」(最安値で14,000円前後、FW-25S3同等品)です。

この石油ファンヒーターの暖房出力は2.5~0.68kWで、燃料消費量は0.243L/h~0.066L/hです。また石油ファンヒーターは、燃焼と温風を吹き出すために電気を使い、その消費電力は小火力時で49W・大火力時で82Wです。

灯油の平均的な消費量は、強と弱の中間値と想定すると、1時間あたり0.1545L/hで、これに灯油代単価 121.5円/L(=1,815円/18L)を掛けると、1時間あたりの灯油代は 18.7円/hとなります。また電気代の計算では、こちらも強と弱の間を取って65.5Wと想定すると、これに電気代単価 36.2円/kwhを掛けると、1時間あたりの電気代は 2.37円/hとなります。灯油代と電気代を合計すると、1時間あたりのランニングコストの合計は 約 21.1円/hとなります。ちなみに、最大出力でフル稼働したとすると、灯油代と電気代の1時間あたりランニングコストの合計は 約 32.5円/hになります。


③ 小型石油ストーブ

小型石油ストーブ(木造8畳・コンクリート10畳用)で、価格.comにおける今の売れ筋人気の商品は、トヨトミの「RS-H29M」(最安値で17,000円前後)。

この石油ストーブの暖房出力は、2.87~2.44kWです。燃料消費量は0.279~0.237L/hなので、この中間値に灯油代単価 121.5円/Lを掛けると、1時間あたりのランニングコストは 約 31.3円/時間となります。


④ 電気ストーブ(遠赤外線ヒーター類)

カーボンヒーターやグラファイトヒーター等を含む電気ストーブ全般(遠赤外線ヒーター類)において、価格.comにおける今の売れ筋ランキング・トップは、日本エー・アイ・シーの「Aladdin AEH-G100B」(最安値で 11,000円前後)です。今流行の、発熱体に黒鉛を使用した遠赤グラファイトヒーターで、立ち上がりが早くて、遠赤外線効果で体の芯から暖まると人気です。

この電気ストーブの出力(消費電力)は1,000Wですから、これに電気代単価 36.2円/kwhを掛けると、1時間あたりの電気代は 約 36.2円/hとなります。


暖房器具のランニングコスト目安(小部屋)
1時間当り 1日8h当り 1ヵ月当り 備考
小型エアコン 17 円/h 136 円/日 4,080 円/月 定格出力時。最大出力時は46円/h。
小型石油ファンヒーター 21 円/h 168 円/日 5,040 円/月 中間出力時。最大出力時は33円/h。
小型石油ストーブ 31 円/h 248 円/日 7,440 円/月 平均定格出力時。
遠赤外線ヒーター 36 円/h 288 円/日 8,640 円/月 出力1,000Wで使用時。
※ それぞれの暖房機器の使用環境や試算条件は異なります。
※ 1ヵ月当りは、1日8時間×30日間利用した場合。

 3.広いリビングでの大型暖房機対決!

次に、木造和室で15畳前後、鉄筋コンクリート造り洋室で20畳前後の、広い座敷やリビングでの暖房を想定してみましょう!。電気エアコンと、石油ファンヒーターやガスファンヒーターを比べた場合、特に寒冷地では、部屋全体が暖まるまでの時間がエアコンよりファンヒーターの方が早いからという理由で後者選ぶ人が多いと思いますが、ここはあくまでランニングコストの比較なので、その点はご容赦ください。

比べるのは、エアコンと、石油ファンヒーター、ガスファンヒーターの、3つの暖房器具です。

① 大型エアコン

2022年11月現在、価格.comの“エアコン・クーラー”の「売れ筋ランキング」において、木造和室暖房16畳・鉄筋洋室暖房20畳クラスの売れ筋の商品は、ダイキンの「うるさらX S63ZTRXP」(最安値で20万円前後)です。

このエアコンの暖房の暖房能力は7.1kWで、暖房時の消費電力量の目安は 1,296W(90~3,730W)です。これに電気料金の単価(36.2円/kWh)を掛けると、1時間あたりの電気代は 約 46.9円/hと計算できます。もちろん、お住まいの地域の外気温や設定温度、住宅の構造等によって、エアコンの消費電力量は変化しますので、あくまで目安にしかなりません。ちなみに、MAXパワー(最大出力=3,730W)でフル稼働したとすると、3.73kWh×36.2円/kWh=約 135円/hにもなります…。


② 大型石油ファンヒーター

大型の石油ファンヒーター(木造15畳・コンクリート20畳用)で、価格.comにおける今の売れ筋人気の製品は、ダイニチの「FW-5622L」(2022年8月モデル、最安値で25,000円前後)。

この石油ファンヒーターの暖房出力は5.6~1.23kWで、燃料消費量は0.544~0.12L/hです。また石油ファンヒーターは、燃焼と温風を吹き出すために電気を使い、その消費電力は弱で80W・強で190Wです。

灯油の平均的な消費量は、強と弱の中間値と想定すると、1時間あたり0.332L/hで、これに灯油代単価 121.5円/Lを掛けると、1時間あたりの灯油代は 40.3円/hとなります。また電気代の計算では、こちらも強と弱の間を取って135Wと想定し、これに電気代単価 36.2円/kwhを掛けると、1時間あたりの電気代は 4.89円/hとなります。灯油代と電気代を合計すると、1時間あたりのランニングコストの合計は 約 45.2円/hとなります。ちなみに、最大出力でフル稼働したとすると、灯油代と電気代の合計は 約 73.0円/hになります。


③ 大型ガスファンヒーター

大型のガスファンヒーター(木造15畳・コンクリート21畳用)の一番売れ筋の商品は、リンナイの「RC-U5801PE」(2022年8月モデル、最安値で50,000円前後)です。

このガスファンヒーターの暖房能力は 5.81kWです。燃料(ガス)消費量は、都市ガス(13A)の場合で5.81kW(5,000kcal/h)となっています。またガスファンヒーターは、燃焼と温風を吹き出すために電気を使い、その消費電力はプラズマクラスターとの同時使用で18Wです。

平均的なガス消費量として、石油ファンヒーターの場合に強と弱の中間値としたことに準じて、仕様の半分の2.905kW(2,500kcal/h)と想定します。ちなみに、ガス機器のガス消費量は、おおよそ1kcal/h=1.163Wです。また、都市ガス(13A)の1m3あたりの発熱量は、45メガジュール(10,750kcal/h)ですから、1時間あたりのガス消費量は、約0.233m3(=2,500÷10,750)となります。これに、ガス代単価 206.6円/m3を掛けると、都市ガス代は 48.0円/hとなります。また電気代の計算では、18Wに電気代単価 36.2円/kwhを掛けると、1時間あたりの電気代は 0.65円/hとなります。ガス代と電気代を合計すると、このガスファンヒーターの1時間あたりのランニングコストの合計は 約 48.7円/hとなります。ちなみに、暖房能力一杯(5,000kcal/h)で動いたと想定すると、1時間あたりの都市ガス代は 96.1円/h、これに電気代 0.65円/hを足すと、最大の1時間あたりのランニングコストは 約 96.8円/hとなります。


 

以上を比べると(下表)、小型の暖房機具で比べた場合と比較して、大型の暖房器具では、燃料の違いによるランニングコストに、ほとんど差が無いことが分かりました。そうなると、初期投資の違いや設備設置の容易さ、燃料供給の簡便さ、部屋が暖まるまでの時間、快適性、加湿やお掃除など利便性機能の充実度など、ランニングコスト以外の部分でのメリット・デメリットによって、どの暖房方法を選ぶのか判断が別れることになりそうです!。

暖房器具のランニングコスト目安(大部屋)
1時間当り 1日8h当り 1ヵ月当り 備考
大型エアコン 47 円/h 376 円/日 11,280 円/月 定格出力時。最大出力時は135円/h。
石油ファンヒーター 45 円/h 360 円/日 10,800 円/月 中間出力時。最大出力時は73円/h。
ガスファンヒーター 49 円/h 392 円/日 11,760 円/月 中間出力時。最大出力時は97円/h。
※ それぞれの暖房機器の使用環境や試算条件は異なります。
※ 1ヵ月当りは、1日8時間×30日間使用した場合。
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