【直木賞2021】候補作・受賞作 紹介

令和3年度の直木三十五賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。



※ 2021年度の芥川龍之介賞の候補作・受賞作は、【芥川賞2021】のページへ!

 2021年下半期 直木賞

候補作 一覧

第166回(2021年下半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。著者5人のうち、今村翔吾(37)氏と米澤穂信(43)氏は3度目の候補入り、彩瀬まる(35)氏と柚月裕子(53)氏は2度目の候補入り、逢坂冬馬(36)氏は初の候補入りです。

そして直木賞に選ばれたのは、今村翔吾さんの『塞王の楯』と、米澤穂信さんの『黒牢城』の2作品でした。

今村いまむら翔吾しょうごさんプロフィールは、京都府木津川市出身の37歳。関西大学文学部を卒業後、家業のダンスインストラクターや滋賀県守山市の埋蔵文化財調査員などを経て、2017年に『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。直木賞は、2018年に発表した『童の神』、2019年の『じんかん』に続き、3回目の候補での受賞となりました。受賞作の『塞王の楯さいおうのたて』は、戦国時代、武将たちの活躍の陰で城の石垣作りに命をかける職人集団「穴太衆」の姿を描いた歴史小説で、幼い頃に戦乱で家族を失い、穴太衆に育てられた石垣職人・匡介が主人公。豊臣秀吉の死後、大軍に囲まれた大津城を舞台に絶対に破られない石垣こそが戦の無い世を作ると考える匡介と、どんな城でも落とせる鉄砲ができれば、戦は無くなると信じる鉄砲職人の集団「国友衆」の頭目との、互いの信念をかけた対決を躍動感あふれる文章で描き出した作品です。

米澤よねざわ穂信ほのぶさんプロフィールは、岐阜県出身の43歳。中学生の頃から小説を書く様になり、金沢大学文学部在学中はウェブ上で作品を発表。卒業後は書店員をしながら執筆を続け、2001年に『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビュー。直木賞は、2014年に発表した『満願』、2016年の『真実の10メートル手前』に続き、3回目の候補での受賞となりました。受賞作の『黒牢城こくろうじょう』は、戦国時代、織田信長に背いて有岡城に立てこもった荒木村重が、翻意を促すためにやってきた黒田官兵衛をろう獄に幽閉したという史実を下敷きにした小説です。村重は、城内で次々と起きる不可解な事件の謎解きを、ろうの中の官兵衛に求める様になる…。戦国の世における村重と官兵衛の心理戦を描いた歴史小説としての要素と、事件の謎解きという推理小説としての要素を併せ持つ作品として話題になりました。


第166回直木賞 候補作一覧
 

同志少女よ、敵を撃て」(早川書房)
逢坂冬馬
 
 

新しい星」(文芸春秋)
彩瀬まる
 
直木賞 受賞

塞王の楯」(集英社)
今村翔吾
 
 

ミカエルの鼓動」(文芸春秋)
柚月裕子
 
直木賞 受賞

黒牢城」(KADOKAWA)
米澤穂信
 

候補作紹介(内容、あらすじ)

同志少女よ、敵を撃て

著者:逢坂あいさか冬馬とうま

第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために……。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?(早川書房)

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新しい星

著者:彩瀬あやせ まる

私たちは一人じゃない。これからもずっと、ずっと
愛するものの喪失と再生を描く、感動の物語。

幸せな恋愛、結婚だった。これからも幸せな出産、子育てが続く……はずだった。順風満帆に「普通」の幸福を謳歌していた森崎青子に訪れた思いがけない転機――娘の死から、彼女の人生は暗転した。離婚、職場での理不尽、「普通」からはみ出した者への周囲の無理解。「再生」を期し、もがけばもがくほど、亡くした者への愛は溢れ、「普通」は遠ざかり……。(文藝春秋)

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塞王の楯(受賞作)

著者:今村いまむら翔吾しょうご

幼い頃、落城によって家族を喪った石工の匡介(きょうすけ)。彼は「絶対に破られない石垣」を作れば、世から戦を無くせると考えていた。一方、戦で父を喪った鉄砲職人の彦九郎(げんくろう)は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていた。秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次に琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼した。大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。(集英社)

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ミカエルの鼓動

著者:柚月ゆづき裕子ゆうこ

この者は、神か、悪魔か――。気鋭の著者が、医療の在り方、命の意味を問う感動巨編。

大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。あるとき、難病の少年の治療方針をめぐって、二人は対立。「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。大学病院の闇を暴こうとする記者は、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫る。天才心臓外科医の正義と葛藤を描く。(文藝春秋)

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黒牢城(受賞作)

著者:米澤よねざわ穂信ほのぶ

史上初、四大ミステリランキング完全制覇! 第12回山田風太郎賞受賞!!

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。(KADOKAWA)

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 2021年上半期 直木賞

候補作 一覧

第165回(2021年上半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。著者5人のうち、澤田瞳子(43)氏は5度目の候補入り、呉勝浩(40)氏は2度目の候補入り。そして、一穂ミチ(43)氏、佐藤究(43)氏、砂原浩太朗(52)氏の3人は初の候補入りです。

そして直木賞に選ばれたのは、佐藤究さんの『テスカトリポカ』と、澤田瞳子さんの『星落ちて、なお』の2作品でした。

佐藤さとうきわむさんプロフィールは、福岡県福岡市の出身。旧筆名は佐藤憲胤(さとう のりかず)。高校を卒業後、働きながら詩人の河村悟氏に教示を受け、2004年に『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作に選ばれデビュー。しかし、純文学を書き続けるも売れない時期が十年以上も続いた後、2016年にミステリー作品『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。2018年にはSF系の『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を受賞。受賞作の『テスカトリポカ』は、5月に発表された第34回山本周五郎賞も受賞しており、2004年の熊谷達也氏『邂逅の森』以来、17年ぶり史上2度目のダブル受賞です。本作は完成まで3年以上を費やした大作で、日本とメキシコを繋ぐ臓器密売ビジネスを背景に、血と暴力にまみれた資本主義の闇とアステカ文明の「いけにえ」の儀式を重ね合わせ、善悪、そして暴力とは何かを問いかける。選考会では、暴力・子どもの臓器売買など文学にこれだけの残虐性が許されるのか、1時間以上の議論になったとか。

澤田さわだ瞳子とうこさんプロフィールは京都府京都市の出身で、母は作家の澤田ふじ子氏。同志社大学大学院で奈良時代の仏教の歴史を研究した後、小説の執筆を始め、2010年『孤鷹の天』でデビュー。2015年『若冲』、2018年『火定』、2019年『落花』、2020年『能楽ものがたり 稚児桜』で直木賞候補に選ばれ、今回5回目のノミネートで直木賞を受賞。受賞作の『星落ちて、なお』は、鬼才の絵師 河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)の娘で、自らも絵を描いた「とよ」(暁翠、きょうすい)の一代記。時代は明治から大正、急速に近代化・西洋化が進み、日本画壇も変化にさらされる。“過去の人”となった暁斎の画風を、どう受け継いでゆくのか。日清・日露戦争、関東大震災を経て、日本社会はめまぐるしく変わっていく中、天才の影に翻弄されながらも、懸命に生きる女性の姿を活写した作品です。


第165回直木賞 候補作一覧


スモールワールズ」(講談社)
一穂ミチ
 
 

おれたちの歌をうたえ」(文芸春秋)
呉勝浩
 
直木賞 受賞

テスカトリポカ」(KADOKAWA)
佐藤究
 
直木賞 受賞

星落ちて、なお」(文芸春秋)
 
沢田瞳子
 

高瀬庄左衛門御留書」(講談社)
砂原浩太朗
 

候補作紹介(内容、あらすじ)

スモールワールズ

著者:一穂いちほミチみち

あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ

北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。しかし、吉岡家出入りの薬売りに見込まれて、札幌の薬問屋で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、そして長女の幼すぎる死。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの人生の道のりを辿ろうとする。数々の文学賞に輝いた俊英が圧倒的筆力で贈る、北の女の一代記。(講談社)

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おれたちの歌をうたえ

著者:勝浩かつひろ

かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。

コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。(文芸春秋)

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テスカトリポカ(受賞作)

著者:佐藤さとうきわむ

東京、炎上。正義は、守れるのか。

些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。警察は爆発を止めることができるのか。爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。(KADOKAWA)

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星落ちて、なお(受賞作)

著者:澤田さわだ瞳子とうこ

「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」建久六年(1195年)。京の六条殿に仕える女房・周子は、宮中掌握の一手として、源頼朝と北条政子の娘・大姫を入内させるという命を受けて鎌倉へ入る。気鬱の病を抱え、繊細な心を持つ大姫と、大きな野望を抱き、それゆえ娘への強い圧力となる政子。二人のことを探る周子が辿り着いた、母子の間に横たわる悲しき過去とは――。「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれる謎多き事件・大姫入内。その背後には、政治の実権をめぐる女たちの戦いと、わかり合えない母と娘の物語があった。(文藝春秋)

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高瀬庄左衛門御留書

著者:砂原すなはら浩太朗こうたろう

戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。脚光を浴びながら、自身の才能を信じ切れず葛藤する、現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアン。CGの嵐が吹き荒れるなか、映画に魅せられた2人の魂が、時を越えて共鳴する。特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。その愛と真実の物語。(講談社)

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【関連ページ掲載】
※ これまで、「本屋大賞・芥川賞・直木賞」の全受賞作を、一覧(リスト)にしていましたが、あまりに数が多くなってしまったので、各賞を切り出した、それぞれのページを作りました。
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