中国・四国の「ご当地ラーメン」

全国のご当地ラーメンの特徴と味の情報に加えて、地域の観光情報も。食べ歩きはいかが?

  • 鳥取県(鳥取牛骨ラーメン
  • 島根県(しじみラーメン
  • 岡山県(笠岡ラーメン
  • 広島県(尾道ラーメン広島ラーメン
  • 山口県(宇部ラーメン
  • 香川県(讃岐のラーメン
  • 愛媛県(八幡浜ちゃんぽん
  • 徳島県(徳島ラーメン
  • 高知県(鍋焼きラーメン/須崎ラーメン
  • (31)鳥取県

    鳥取牛骨ラーメン

    • 地域エリア:  鳥取県
    • 由来や定義:  「鳥取牛骨ラーメン」の発祥については諸説あり、はっきりしていません。1950年代に、満州料理をヒントに作られたとする説や、中国の蘭州拉麺(牛肉のスープと手打ちで伸ばした麺)がルーツだとする説などがあります。牛骨からダシをとるラーメンは全国的にも珍しく、鳥取県以外では、山口県下松市などに限られています。しかし、地元では当たり前のこととして、牛骨ラーメンが珍しいご当地ラーメンであるとは、ほとんど認識されていませんでした。2009年に「鳥取牛骨ラーメン応麺団」が結成されると、メディアでも取り上げられるようになり、2010年3月に放送された日本テレビ「月曜スーパーサプライズ」の企画番組「ご当地最新B級グルメ ベスト50」で鳥取牛骨ラーメンが2位になり、その名を一躍全国区にしました。(ちなみに、1位は徳島ラーメンでした。)

    (32)島根県

    しじみラーメン

    • 地域エリア:  松江市、出雲市、その周辺
    • 由来や定義:  実は、島根県にも「ご当地ラーメン」と呼べるほど、地域色の強い地域に根付いたラーメンは見当たりません。ご当地B級グルメとして、あるいは特定の商売や商品名として、”松江ラーメン”や”出雲ラーメン”、”すっぽんラーメン”などの名前も散見されますが、知名度はさほど広がっていないようです。ただ、松江市と出雲市にまたがる宍道湖(しんじこ)で獲れる特産「しじみ」が島根名物で、この辺りにはしじみダシのラーメンを提供する店が複数あります。また、お土産物にもしじみラーメンが並んでいることから、ここでは島根県のご当地ラーメンとして、「しじみラーメン」を勝手に推薦しておきたいと思います。(青森県にも、十三湖で獲れるしじみのラーメンが名物としてあるようですが、ご容赦下さい。)

    (33)岡山県

    笠岡ラーメン

    • 地域エリア:  笠岡市
    • 由来や定義:  「笠岡ラーメン」は、別名”かしわラーメン”(鶏ラーメン、鶏そば)とも呼ばれています。「かしわ」から取った鶏ガラ醤油味のラーメンに、チャーシュー(豚肉)ではなく、かしわチャーシューが載せられます。西日本では、鶏肉一般を「かしわ」と呼びますが、岡山弁では「かしわ」とは、卵を産まなくなった老鶏肉のことを指します。もともと備中では、養鶏業が盛んで、かしわが安く手に入ったことと、「備中手延べ麺」など製麺業も盛んで、麺文化にもなじみが深かったこともあり、戦前には笠岡市内にあった十数軒の食堂で、かしわを使った中華そばが提供されていたようです。こうした食堂の中華そばが発展して、現在の笠岡ラーメンのスタイルが、地域に根付きました。

    (34)広島県

    尾道ラーメン(尾道の中華そば)

    • 地域エリア:  尾道市、その周辺(備後地域)
    • 由来や定義:  尾道のラーメン(中華そば)の発祥は、昭和3年に尾道市内の製麺所に住み込みで働いていた中国人が作った麺であるとされ、それが好評で、尾道のラーメンづくりが広まったと言われています。昭和22年には、「朱華園」のルーツとなる屋台が開業、その後市内には非常に多くのラーメン屋台や専門店が集積し、尾道に独特のラーメン文化が根付いてきました。
      1980年代に、大林宣彦監督の尾道三部作と呼ばれる映画「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」が公開されると、尾道の街並みが人気を呼び、観光客が急増します。この尾道ブームに乗って、お隣の福山市にあった食品加工会社の阿藻珍味では、お土産用の箱入りラーメンを開発、「尾道ラーメン」として発売したところ、マスコミにも取り上げられ、人気となります。この商品によって、”尾道ラーメン”という呼称が全国に広がることとなりました。また同時に、「尾道ラーメン」の特色として打ち出した、いりこだしを加えた鶏がらスープに醤油味、歯ごたえのある平打ち麺、シンプルな具材に背油ミンチを浮かべるというコンセプトが、尾道のラーメンのイメージとして、全国に定着するようになりました。
      しかし、もともと尾道に店を構えていたラーメン店では、こうした「尾道ラーメン」とは異なる味や製法で、ラーメン(中華そば)を提供している店も少なくなく、『尾道のラーメン(中華そば)と、商品名である「尾道ラーメン」とは、別物』とする拒絶反応が、地域のラーメン店主や地元のラーメン通の中に生まれてしまったのは、残念なことです。全国のラーメンファンからすると、商品名としての「尾道ラーメン」も、地元で古くから愛されている尾道の「中華そば」も、やはり「尾道ラーメン」として括ることができる時代が来ることを願うばかりです。

    広島ラーメン

    • 地域エリア:  広島市、その周辺(県西部)
    • 由来や定義:  広島ラーメンは、それほどご当地色のあるラーメンでは無いのですが、県庁所在地でありながら、広島県では尾道ラーメンに代表される県中部から東部にかけての、濁らない鶏がらベースの醤油味のラーメンが注目されがちで、それとは明らかに異なるラーメンが広島市内では昔から好まれて広まっているため、広島っ子は敢えて「広島ラーメン」として、その違いを訴えているようです。
      広島ラーメンのルーツは、原爆投下で焼け野原となった戦後の広島市内で、中国から戻った沖さんという人が始めた屋台、「上海」だと言われています。その後、市内の屋台に対しての規制が厳しくなり、沖さんの親族らがそれぞれ店を構えて独立することとなりますが、それが「しまい」「すずめ」「陽気」という店で、これらのラーメン店が、現在の広島ラーメンのスタイルを築き上げてきました。代が替わり、経営者が替わりしていますが、今でもこれらの店は残っていて、広島ラーメンの御三家として語り継がれる存在になっています。

    (35)山口県

    宇部ラーメン(くさうまラーメン)

    • 地域エリア:  宇部市、その周辺
    • 由来や定義:  山口県でも、今では新たなラーメン店がぞくぞく開業してオリジナリティを発揮していますが、以前は県中部にある椿峠(防府市)を境にして、東の「醤油系ラーメン」と、西の「豚骨系ラーメン」とに、大きくその系統が分かれていました。ただ、西の豚骨ラーメンでも、多くはあっさりしたスープに細麺の「博多系豚骨ラーメン」が主流でしたが、宇部市においては、匂いが強く濃厚なスープに中太麺の「久留米系の豚骨ラーメン」が主流で、山口県内でも特異なラーメン文化が根付いています。
      ”宇部ラーメン”のルーツは、大阪から移り住んだ人が始めた「大阪屋」(昭和24年創業)であるとされています。当初は食堂を営んでいましたが、当時炭鉱で栄えていた久留米へ出向き、人気だったラーメン作りを学んで帰り、宇部でリヤカーを引いてラーメンの屋台をはじめたのが、久留米ラーメンの発祥となります。後に、中央町に店舗を構え、以来、その店の暖簾が広まり、現在の宇部ラーメンへと発展してきました。2013年に、宇部市が地域活性化のために、ご当地ラーメンとすべく「宇部ラーメン」のブランド化を目指して、宇部市シティセールスパートナーとの協働企画で「宇部ラーメンマップ」を作製したことで、その名が広まりました。この地では、宇部ラーメン特有の塩気と脂気の効いた独特の匂いとうまさを『くさうま』と称していることから、宇部ラーメンを『くさうまラーメン』として、1)茶濁濃豚骨であること、2)強い豚骨臭がすること、3)中太の柔らかい麺を使用していること、の3か条を「くさうまラーメンの定義」としています。

    (36)香川県

    讃岐のラーメン

    • 地域エリア:  香川県
    • 由来や定義:  香川県でよく見かける製麺所系のうどん屋さんの一部には、日本蕎麦(そば)や中華麺(中華そば)を置いている店があります。注文の際に「中華そば」と頼むと、どんぶりに中華麺が入って出てきますので、それに自分でうどんダシを掛けて食べます。つまり、関西で昔よく食べられていた「黄そば(きぃそば)」になります(今でも姫路駅には名物「えきそば」として残っているとのこと)。こうした中華そばの食べ方は、地元では当たり前のこととして定着しているようですが、他県民にとっては珍しい食文化ですので、ここではこれを”讃岐のラーメン”と呼び、香川県のご当地ラーメンとして推薦させて頂きます。ちなみに、「松下製麺所」では、うどんと中華麺をミックスして(混ぜて)食べること常連客が『ちゃんぽん』と呼んだり、「池内」では、うどんとそば(蕎麦)を混ぜて食べることを『アベック』と称したりしているようです。
      なお、香川にあるセルフ系や大衆系のうどん店では、うどんのメニューの他に、通常のラーメン(中華そば)をメニューに置いている店もありますが、「讃岐のラーメン」は、あくまで中華麺とうどんダシが組み合わさった食べ方を指し、これとは異なります。また、香川県の人気ラーメン店「はまんど」が、屋号に「讃岐ラーメン」と冠していますが、これは讃岐発祥をアピールしているものであって、ここで言う「ご当地ラーメン」として紹介する「讃岐のラーメン」とは異なりますので、ご留意ください。

    (37)愛媛県

    八幡浜ちゃんぽん

    • 地域エリア:  八幡浜市、その周辺
    • 由来や定義:  八幡浜市は、四国の西の玄関口とも言われ、古くから九州や関西地方との海上交易が盛んでした。そんな、みなとまち八幡浜にも長崎や横浜と同じように、中国から食文化が伝わり、地元の食材や食文化との融合の中で、「八幡浜ちゃんぽん」が生まれ、地域に広まったと言われています。現存する最古参の店は、昭和23年創業の「丸山ちゃんぽん」です。
      地元のソウルフードでもある八幡浜ちゃんぽんを地域おこしに活用しようと、平成18年に商工会議所が中心となって「八幡浜ちゃんぽんプロジェクト」を立ち上げ、平成19年に八幡浜市は「八幡浜ちゃんぽん憲章」を制定、平成22年には商工観光課内の担当係長として「ちゃんぽん係長」を設置し、全市を挙げて八幡浜ちゃんぽんのPR活動を展開しています。今では、市内の50近くもの店が、八幡浜ちゃんぽんを提供しています。

    (38)徳島県

    徳島ラーメン

    • 地域エリア:  徳島市、その周辺(徳島県東部)
    • 由来や定義:  昭和10年前後に、ラッパ(チャルメラ)を吹きながら市内をまわる支那そばの屋台が増え始めました。その後、太平洋戦争で屋台を引くのが困難になると、屋台を閉め店を構える人も増え始めます。この頃、日本ハムの前身となるハム工場が創設されますが、戦災で焼失し、戦後に工場が再建され、昭和26年に徳島ハム(後の日本ハム)が設立されました。このハム工場により、徳島では安価に豚骨が入手できるようになったことから、豚骨系のスープが広まったと言われています。こうして、徳島市を中心に、県内各地で、支那そば(中華そば)の屋台や店舗が増え、この地域に独特のラーメン文化が根付くようになりました。しかし、もともとは”徳島ラーメン”として、ひとつの流儀や系譜があった分けではなく、多種多様な我流のラーメン店の集積が起こった地域です。そのため、徳島では店によってスープの色が様々だったり、チャーシューを使う店や豚バラ肉を使う店があったり、さらに生タマゴを落として食べたり、ご飯を一緒に食べるスタイルが広まったりと、変幻万差のラーメン文化となりました。
      この多種多様なラーメンスタイルが、逆にご当地色になると、「新横浜ラーメン博物館」が徳島のご当地ラーメンとして「徳島ラーメン」と銘打ち、平成11年に「いのたに」が全国のご当地ラーメンの一つとしてイベント出店することとなり、「徳島ラーメン」という呼び名が、全国に広まることとなりました。そして、徳島のラーメンには、スープの色の違いから主に「白・黄・薄茶色系」があると分析され、茶系ラーメンを出す店では生卵を入れることが多いことに注目が集まり、また、ラーメンの量が少なめで、ライスを無料でサービスする店が多いことから、ご飯を一緒に食べるのが徳島ラーメンのスタイルであるといった認識が広まることとなりました。

    (39)高知県

    鍋焼きラーメン(須崎ラーメン、須崎鍋焼きラーメン)

    • 地域エリア:  
    • 由来や定義:  戦後まもなく須崎市の路地裏に開業した「谷口食堂」では、食糧難の時代でも比較的入手しやすかった鶏ガラや廃鶏を使ってスープを作り、安価なネギや玉子、ちくわ、そして鶏肉をトッピングに使って、ラーメンが作られていました。その後、出前を始めるにあたって、ラーメンが冷めないようにホーロー鍋を使ってラーメンを提供するようになったことで、「鍋焼きラーメン」が誕生したと言われています。その後に開業した周辺の食堂でも、これを真似て、土鍋を使った鍋焼きラーメンがメニューに加えられ、須崎市民に鍋焼きラーメンが広まっていきました。
      昭和30年代、鍋焼きラーメンの事を須崎の人たちは「ぽこぺん」と呼んでいましたが、由来は不明です。当時、谷口食堂の前には銭湯があり、銭湯帰りに鍋焼きラーメンを食べることが、須崎市民の楽しみともなっていましたが、昭和55年に谷口食堂は、惜しまれつつも閉店してしまいます。すると、ソウルフードであった谷口食堂の味が忘れられないと、熱狂的な鍋焼きラーメンファンが立ち上がり、当時の味を復活させる取り組みが起こり、徐々に鍋焼きラーメンを提供する店が増えて行きます。そして、平成14年に須崎商工会議所が、全国的にも珍しい鍋焼きラーメンを地域活性化の起爆剤にしようと、「鍋焼きラーメンプロジェクトX」を発足させました。このプロジェクトに賛同して、少年時代を高地県で過ごした漫画家・やなせたかし氏が、鍋焼きラーメンのキャラクター「なべラーマン」を誕生させ、また、須崎市の新荘川で国内最後に確認されたニホンカワウソも「カウちゃん」として、同時にキャラクター化されました。
      「鍋焼きラーメンプロジェクトX」では、須崎の食文化「鍋焼きラーメン」を次の世代にも伝え、発展させて行きたいと、鍋焼きラーメンとして7つの定義を定めています。それは、1)スープは親鳥の鶏がら醤油ベースであること、2)麺は細麺ストレートで少し硬めに提供されること、3)具は親鳥の肉・ねぎ・生卵・ちくわ(すまき)などであること、4)器は土鍋(ホーロー、鉄鍋)であること、5)スープが沸騰した状態で提供されること、6)たくわん(古漬けで酸味のあるものがベスト)が提供されること、7)全てに「おもてなしの心」を込めること、です。

     ご当地ラーメン特集 コーナー目次

     

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