ダイコンの育て方

都会からリタイアして地元の田舎に戻り始めた家庭菜園、少しずつ学んだ野菜の育て方のコツをまとめてみました。

 1.ダイコン栽培のキモとコツ

ダイコンとは

ダイコン(大根)は、アブラナ科ダイコン属の越年草で、主に肥大した根を食べます。ただし、スーパーで売られているダイコンは、萎びてしまうので葉が切り落とされていますが、家庭菜園で収穫した新鮮なダイコンの葉は、炒めたり味噌汁に入れたりして、美味しく頂けます。

原産地は定かでありませんが、地中海地方や中東地域と考えられ、古代エジプト時代には食用されていた様です。日本にも、古く弥生時代には伝わったとされ、地域ごとに様々な品種が生まれました。江戸時代に全国に名を馳せた練馬大根や、世界一大きな桜島大根、世界一長い守口大根など、今や日本は、ダイコンの品種が世界で一番多い国だそうです!。調理方法も多種多様に広がり、これほど日本で庶民の生活に根付いた野菜は、他には無いかもしれません。アツアツおでんに大根は欠かせませんし、様々ある大根漬けも美味。ダイコンを食べる国は日本以外にも沢山ある様ですが、さすがに切り干し大根を作って更に料理のレパートリーを広げた国は、日本だけでしょう!。そのうえ、消化が良くて食中りしないことから、「大根役者」とか「大根バッター」なんて言葉も生まれましたし、「大根足」なんて誉め言葉?もありますよね(笑)。

【品種】
現在、日本で最も多く食べられているダイコンは「青首ダイコン」で、市場での流通量は98%以上だそうです!。ただし、単に青首ダイコンと言っても、長いものや短いもの、青首部分の長いもの短いもの、胴が太いものや先が太いものなど、様々な品種があります。用途としても、春蒔き向きのダイコンや、おでんや煮物向き、漬け物向き、切り干し向きなど、多種多様です。青首ダイコン以外は、その多くが地域の伝統野菜として栽培が続けられている品種で、「亀戸大根」や「源助大根」、「聖護院大根」「守口大根」「桜島大根」などが有名です。我が長野県の坂城町にも、辛味大根として有名な「ねずみ大根」があります。ネズミのような形をした小さな大根で、辛味が強く、すりおろした大根の絞り汁に、味噌や薬味を入れて、うどんやそばを浸けて食べる「おしぼりうどん」や「おしぼり蕎麦」が名物です!。汗が噴き出すほどの辛さが、なぜか癖になり、また食べたくなるのが不思議です(笑)。
さて、話は戻しますが、一般的に秋に栽培するダイコンで人気の青首品種は、「耐病総太り」(略称:さい)。早太りでス入りは遅く、耐病で栽培しやすい、家庭菜園では最もポピュラーな大根です。そのうえ、肉質もよく、生食・浅漬・煮物など用途が広い点も、おすすめです。
一方、家で食べるので育ちに多少のバラツキがあっても問題なし、そんなに収量が伸びなくても気にしないという方には、「宮重総太り」が、タネも安いし、作り易くて、おすすめです。私は、ずっと宮重ばかりです(笑)。耐病総太りに比べて、タネの値段が半値以下というのも嬉しい限り!。宮重(みやしげ)大根は、愛知県の特産である尾張大根を代表する品種で、旧春日村宮重の発祥とされ、青首大根のルーツとも言われています。根の止りが良くて太りやすい「宮重総太り」に対して、細めの「青首宮重大根」や「白首宮重尻丸大根」などもありますよ。
【連作障害】
基本的に連作は避けたいところですが、アブラナ科には、キャベツや白菜、ブロッコリーやカリフラワー、小松菜やチンゲン菜など、家庭菜園で作る多くの野菜が含まれ、なかなか間を開けるのは難しいのが本音です。少なくとも前作で、ダイコンを栽培した場所は避けて栽培するようにしましょう。
【病害虫】
アブラナ科に共通する病害虫が発生しますが、葉物野菜ほどに大きな被害を受けることは少なく、基本的に作り易い野菜の部類です。
秋の長雨により、べと病などの病気が発生する場合もありますが、大量に作る野菜なので、病んだ株はさっさと撤去してしまうのが得策です。
ただし、最も注意したいのは、発芽後の幼苗のうちに、葉に穴を開けられる「キスジノハムシ」や、「ダイコンハムシ」などのハムシ類による被害。特に「キスジノハムシ」が厄介で、幼苗のうちに葉に小さな穴を沢山あけられると生育が滞り、被害がひどくなると、苗が枯れてしまうこともあります。体長は2ミリ程度と小さく、黒色で2本の黄色い筋があるのが特徴で、触るとノミの様に飛び跳ねるため、手で捕まえるのは困難です(汗)。さらに迷惑なことに、株元に卵を産み付け、ふ化した幼虫が根を食害し、ダイコンの表面が傷だらけになってしまいます…(泣)。
基本的には、殺虫剤の撒布をおすすめしますが、ダイコンのタネを蒔いたら、すぐに防虫ネットを掛けるのが得策です!。わざわざトンネルにしなくても、穴があいたり破れた不織布などを、「べた掛け」しただけでも効果が期待できます。株が大きくなったら、ネットを剥いでも、後は葉に多少穴を開けられたところで、株が枯れるようなことにはなりません。
ダイコンのキスジノミハムシ駆除に効果があるのは、「アタブロン乳剤」や「モスピラン液剤」。100ml入りなら1千円くらいで、ダイコンをはじめキャベツなどアブラナ科の野菜につくアオムシやヨトウムシ、コナガなどにも効果があるので、家庭菜園では一本あると便利な薬剤です!。

 2.種まき

ダイコンやニンジンなどの根もの野菜は、移植に向きませんので、畑に種を直播きします。土中に石や肥料の塊があると、根割れや変形の原因になるので、出来るだけ早めに石灰と肥料を施して、深く耕しておきましょう!。

ダイコンの種まきの時期は、春と秋の2度ありますが、春まき栽培の収穫時期は暑さがやって来る季節になるため、冷涼を好むダイコンにはあまり向きません。私は初夏に大根を食べたいとは思わないので、最近は秋まき栽培オンリーです。春まき栽培では、ダイコンの代わりに、カブや20日大根を育てています(笑)。春まき栽培する場合は、トウ立ちが遅い晩抽性の、春まきに適した品種を選びましょう。前年の9月に秋まきしたダイコンの残り種を春に蒔くと、ほぼ100%トウが立ち、収穫に至りませんのでご注意あれ!。

秋まき栽培の播種の適期は9月上旬。長野では霜の降りだす11月中旬に収穫期を迎えます。収穫したダイコンは、葉を切り落とし、凍みない様にして土蔵や物置に貯蔵すれば、翌年の3月まで食べられます。ダイコンは、ジャガイモやニンジン、タマネギと同様に、寒い地域では冬の保存食になります。暖かい地域であれば、抜いたダイコンを肩まで埋め直して、畑で貯蔵することも可能ですし、氷点下にならない地域であれば、収穫せずに畑でそのままにして、2月くらいまで収穫し続けることも可能です。

【気象環境】
発芽適温は15~30度と幅が広いのですが、生育適温は15~20度と、冷涼な気候を好みます。
【播種の適期】
根の肥大化が一番進むのが、気温20度くらいの時期なので、春まき栽培では、GW明けから5月中が収穫の適期になり、種まきは2月下旬から3月上旬。温暖地でも、トンネルで寒さ対策をして栽培します。長野のような寒冷地では、さすがにトンネルでもこの時期に発芽・生育させるのは困難なので、露地栽培が可能な4月下旬に種まきをし、なんとか梅雨入り前に収穫したい所ですが、なかなか良いダイコンには育ちません…(汗)。
ダイコンが栽培しやすいのは、秋まき栽培。9月上旬~中旬が、ダイコンの種まきの適期です。とは言え、その年によって秋の天気は気まぐれ…。秋晴れが続くと、ダイコンが育ちすぎて、11月上旬には貯蔵するのに困るほど太って、処分しなければならない年もあれば、秋の長雨が続き、霜が降りるまでに太らず、まともに収穫できない年もあります(汗)。なお、さんまの旬の時期に間に合わせたい場合は、必要な量だけ、8月下旬に早蒔きしましょう!(笑)。
種まきと収穫時期
 
【土壌・施肥】
保水性と排水性のよい、火山灰土が最適とされています。練馬大根が有名になったのも、大昔に富士山や箱根の火山が噴火した時の火山灰が堆積した、関東ローム層に厚く覆われていたからです。とは言え、我が家の畑の様に、水はけの悪い粘土質でも、ちゃんとダイコンは育ってくれます!。ダイコンは湿潤には弱いので、湿潤しやすい畑では、出来るだけ深く耕し、高畝にして育てましょう。
石や粗い堆肥が混じると、根割れや変形の原因になります。「大根十耕(だいこん じっこう)」という言葉がありますが、大根十耕とは、『長くて真っ直ぐで、肌が白くてきれいな大根を収穫するためには、種を蒔く前に十回は畑を耕すべし!』とする格言です。早めに石灰と肥料を施し、深くよく耕しておきましょう。

種の蒔き方

ダイコン種まきの株間・条間大根の種は、畝を立てた場所に直播きします。株間は25cm~30cm、条間は30~40cm。育てる品種によって、小さいダイコンは狭めに、大きくなるダイコンは広めに間隔を取ります。

種を直播きする場合、発芽しなかった場所に後から追い蒔きすると、成長が揃わず、追い蒔きの株の生育が滞りやすいので、一カ所に数粒の種を蒔き、間引いて育てる様にします。タネの袋には、『1カ所に3~4粒をまき』と書かれていることが多く、書籍には『1カ所に5粒ずつ蒔け』と書いてある場合もあります。沢山蒔いてもらった方が、種苗メーカーは嬉しいので、数多く蒔けと指示するのは当たり前ですが、最低限の保険と考えるなら、1カ所に2粒でも構いません。両方ともダメになったら、そこは歯抜けになっても構いませんし…(笑)。後は、買った種の値段と数により、各自でご判断ください!。ダイコンのタネ1袋に、5mlで200粒も入っているとすると、1カ所2粒蒔きなら100本ものダイコンが採れます。50本で十分なら4粒ずつ蒔いても構いませんし、残ったら取っておいて、翌秋に蒔いても構いません。

ダイコンの種は比較的長命で、4年間くらいは持つと言われています。しかし、実際は発芽率が落ちたり、抽苔しやすくなったりするので、ダイコンの種は、出来れば使い切ってしまった方が得策です。むしろ、買った種を使いまわすより、固定品種のダイコンを育てて、自家採種することをおすすめします!。冬に収穫せずに、土から出た部分に土寄せして越冬させれば、翌春にはトウが立って花が咲き、タネが採れますよ。

種を蒔いた後の覆土の厚さは、約1cm。アブラナ科の野菜の種は、ほとんどは好光性ですが、ダイコンの種は嫌光性です。ある程度の覆土は必要ですが、深すぎても発芽が揃いません(汗)。

ダイコンの種まきが済んだら、畝全体に防虫ネットか不織布をべた掛けしておきます。四隅と所々に、専用の止め金具を土に挿して風に飛ばされない様にしますが、何なら石を置いておくだけでも構いません。もちろん、トンネルで覆ったら、さらにグッドです!(笑)。

 3.管理と収穫、貯蔵

管理

1カ所に数粒の種を蒔いた場合には、本葉が2~3枚になったら間引いて2本立ちにし、本葉が5~6枚になったらもう一度間引いて、1本立ちにします。

葉が広がり出す頃になると、草も伸びてきますので、草取りを兼ねて、追肥をして中耕します。


収穫

ダイコンの収穫の目安地上から出ている首の太さを見て、収穫時期を判断します。

10月になり、頭が土から出始めたら、太いものから順番に収穫して、食べ始めても構いません。早蒔きしたダイコンなら、サンマが安くなり出すまでに間に合いますよ(笑)。寒い地域では、霜が降りだす頃までには、全部のダイコンを収穫し、貯蔵します。

貯蔵

11月に大量に収穫した大根は、凍みない様にして、土蔵や物置に貯蔵すれば、翌年の3月いっぱいまで、保存食として食べ続けることができます。

まず、収穫した大根の葉を、畑で切り落とします。葉は、少しでも残すと再び成長を始めてしまうので、大根の実を少しそぎ落とす程度に、完全に切り落とします。切り取った葉で、大根の泥をぬぐい取りますが、後に台所に土を持ち込みたくない人は、さらに水道でキレイに土を洗い落します。そのまま段ボール箱に入れても構いませんが、だんだん表面が萎びてしまうので、ビニール袋に入れてから段ボール箱に入れると、萎びるのを防ぐことが出来ます。大根は、横向きか、天地を逆にして貯蔵すると、長持ちすると言いますが、効果のほどは不明です…(笑)。後は、物置にしまうだけですが、冬の最低気温が氷点下10度以下に下がると、段ボール箱に入れただけでは、大根が凍みてしまうことがあります。凍って溶けてを繰り返すと、大根の実が痛んでしまうので、寒い地域では、不要になった毛布や布団で包んだり、発泡スチロール製の箱に入れたりして、凍みない様にして貯蔵します。

暖かく雪の降らない地域であれば、畑で貯蔵することも可能です。ダイコンは、土から出ている部分が凍害を受けるので、一旦抜いてから、深さ30cmほどの穴にダイコンを斜めにして並べ、肩まで土で覆い埋め直します。氷点下にならない地域であれば、収穫せずに畑でそのままにして、2月くらいまで収穫し続けることも可能です。

秋晴れが続いて、大根が太り過ぎて、とても貯蔵しきれない時には、自家製の切り干し大根を作って保存しましょう!。段ボール箱一杯の大根が、ビニール袋1袋にまで小さくなりますよ(笑)。

 


(自家製)切り干し大根の作り方

自家製切り干し大根の作り方ちゃんとした切り干し大根の様に、包丁を使って手で、大根を薄く細く剥き上げるのは、無理があります(汗)。そこで、乾燥しやすい様に、薄く短冊状に切って、ワイヤーハンガー(針金ハンガー)に吊るして、ベランダで干し上げる方法が、簡単で早いです(笑)。

切り方にもよりますが、太くて大きな大根1本で、ワイヤーハンガー2本分くらいになります。

①大根を切る

皮を剥いた大根を、厚さ1cmの短冊状に切ります。

小さく薄く切れば切る程、早く乾きますが、干す作業が面倒で、干す場所も沢山必要になります。一般的にスーパーで売られている程度の青首ダイコンであれば、長さを半分か3分の1に切った後、縦半分に真っ二つに切ります。それを、1cmくらいの幅(厚さ)で短冊状に縦に切り分けます。できた大根の短冊の真ん中に、上に2cmくらい残して、縦に切り込みを入れます。切り込みは、1本だけでなく、沢山入れれば、それだけ早く乾きます。

②ベランダに干す

晴天が続く日中に、切り込み部分をワイヤーハンガーに引っ掛け、ベランダで乾燥させます。よく乾くまでには、1週間以上かかりますが、雨に当たるとカビてしまうため、天気の悪い日と夜は、家の中に入れましょう。ただし、部屋中に大根臭が充満しますので、仕舞い場所を考えておく必要がります(汗)。

大根がよく乾いて小さくなったら、百円ショップで買った洗濯ネットなどに入れて、物置などに吊るして保存します。

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