トウモロコシの育て方

都会からリタイアして地元の田舎に戻り始めた家庭菜園、少しずつ学んだ野菜の育て方のコツをまとめてみました。

 1.トウモロコシ栽培のキモとコツ

トウモロコシとは

トウモロコシは、イネ科の一年生植物で、人間の穀物や家畜の飼料などとして世界中で大量に生産されており、”小麦”や”米”と並ぶ「世界三大穀物」のひとつです。とても古くから栽培されており、紀元前5000年ごろには大規模栽培が定着、その後に興るマヤ文明の繁栄を支えたとも言われています。しかし、アメリカ大陸からヨーロッパに渡ったのは、1492年のコロンブスによる新大陸発見の時と言われており、ほどなくして日本にも伝来、世界中で栽培される様になりました。

日本語のトウモロコシの語源は、古くに今の中国のことを指した”唐土”(もろこし)の”唐”の国から伝来したからとされており、英語圏では一般的にコーン(corn)と呼ばれています。ただし、cornとは本来は穀物全体を指す言葉で、イギリスでは今でも穀物をcornと呼び、トウモロコシのことはmaizeと呼ぶそうです。日本でも、地域によって”とうきび”や”きび”、”なんば”など、様々な呼び方があり、『日本方言大辞典』には267種もの呼び方が載っているそうです。ただし、時代とともに徐々に方言は薄れ、今では全国的にトウモロコシと呼ぶのが一般的です。


【品種】
トウモロコシは、その長い歴史の中で、用途に応じて様々な品種改良が行われてきました。そもそもトウモロコシは、雑種強勢(両親から生まれた子が何れの親より良質な雑種として生まれること)の性質があり、現在栽培されているほぼ全ての品種は、一代交配種(F1)です。なので、トウモロコシの種を買うと高いからと、今年栽培したトウモロコシから種を自家採種して来年蒔いても、美味しいトウモロコシは採れませんのでご注意あれ!。
日本で一般的に食用として栽培されているトウモロコシの品種は、大きくは色や食味によって分類されています。最も普及しているのが、スイートコーンと呼ばれる「甘味種」。他には、実が黄色く生食も可能な「甘味黄色粒種」(味来ゴールドラッシュなど)や、白や黄色などの粒が混ざった「甘味バイカラー種」(ピーターコーンカクテルなど)、実が白い「甘味白色粒種」(ピュアホワイトホワイトショコラなど)があります。最近は、生で食べても甘くて美味しいトウモロコシが大人気ですが、それでも私は、生で食べるより、茹でて食べます…(笑)。また、これも個人的な感想ですが、味的には私は白より黄色を、そして茹で方も、レンジでチンよりは、あまり沸騰させない程度の温度で水から長めに茹でるのがおすすめ。お湯から茹でるより、甘みが増すような気がします。食感的にはお湯から茹でた方が美味しいという人もいますが、私は歯が悪いので、柔らかめが好きです(笑)。
ちなみに、これらのトウモロコシを炒っても、ポップコーンにはなりません!。先日、ナイナイの岡村が、チコちゃんに『ボーっと生きてんじゃねーよ!』と叱られていましたが、ポップコーンが作れるのは、皮がとてつもなく固い「爆裂種」という品種のトウモロコシだけです。また、「ジャイアントコーン」も、トウモロコシの一品種です。
【連作障害】
基本的に、連作障害は無いとされています。むしろ、連作障害が発生しやすい野菜の後作や前作にトウモロコシを栽培することで、その連作障害を減らす「輪作効果」が期待できると言われています。
【病害虫】
病気は、水捌けの悪い土壌での過湿によるもの以外は、滅多に発生しません。水捌けの悪い圃場では、高畝にしたり、土寄せで排水力を確保しましょう。
トウモロコシに虫の穴一方、害虫に関しては、トウモロコシには大敵がいます!(汗)。トウモロコシを包んでいる皮に穴をあけ、中に入り込んで実を喰い荒らす、アワノメイガの幼虫です。茎に入り込んで、株自体を枯らしてしまうこともある、憎らしい害虫です。トウモロコシの花粉を頼りに寄って来たアワノメイガが、トウモロコシの大きな葉の裏に卵を産み付けると、それを見つけるのは困難です。しかし、トウモロコシの畝全体に防虫ネットを掛けることも出来ません…。仕方ないので、虫の入った部分を切り取って食べるか、農薬の力を借りることになります。
トウモロコシの殺虫剤と言えば、トレボンで決まり!。トレボンには粉剤と乳剤とがありますが、トレボン粉剤は撒くのが面倒なので、水で薄めて噴霧器で撒ける、「トレボン乳剤」がおすすめ。雄穂の頭が出始めた頃と、雌穂の絹糸が伸び始めた頃、トウモロコシの形が出来た頃に、葉の表だけでなく裏にもしっかりとトレボンを散布するのがコツです。使用制限は4回以内、収穫7日前までです。

 2.種まきと定植

トウモロコシは、種を土に直接蒔く直播きでも、種をポットに蒔いて育てた苗や買ってきた苗を、畑に植え替えても、どちらでも栽培できます。ただし、露地栽培でトウモロコシの芽が出るのは、暖地でも4月下旬、寒冷地では5月以降。種まきから収穫までは約3か月近くかかるので、7月上旬の梅雨入りした頃にトウモロコシが食べたいとなると、どうしてもポット蒔きして、保温下で育苗する必要があります。でも、直播きした方が、植え替えするより生育は早いので、病害虫にも強く、安定した収穫が得られる様な感じがします(笑)。

トウモロコシの鮮度は落ちやすく、一度に全部収穫しても食べきれないので、トウモロコシの種蒔きは、時間差で何回にも分けて蒔きます。4月中旬から6月いっぱいまで蒔けますが、遅くなって猛暑を耐え忍んで育ったトウモロコシはあまり美味しく無いので、食べごろはお盆くらいまで。長野盆地だと、5月上旬から中旬くらいに種まきをし、梅雨明け頃に頂くトウモロコシが、一番食べ応えがあるように思います!。その後のトウモロコシは、単に食べ飽きるからかもしれませんが、イマイチの様な気が…(汗)。なお、時間差で種まきをする場合は、受粉しやすい様に、近い場所に固めて蒔くのがコツです!。

【気象環境】
発芽は10度くらいからと、比較的低温でも可能ですが、生育適温は20度~30度。低温にも高温にも、よく耐えます。しかし、長野県でもトウモロコシ産地と言えば少し標高の高い地域になりますので、冷涼な気候の方が適している様です。特に、肥えた土地で育ったトウモロコシの味は別格。信濃町の”もろこし街道”は特に有名ですが、さすがに去年の様な日照り続きだと、パサパサしてしまい、あまり美味しく感じませんでした。雨不足の年には、水枯れしない程度の水遣りは必須。ただし、多湿だと病気になりやすいのでご注意を。
【播種の適期】
早採りするには、3月にポットに種を蒔いて保温育苗し、4月にマルチをした畝に植えます。ただし、暑くなった旬の頃にトウモロコシを食べるなら、4月下旬から5月中に、直播き栽培するのがおすすめ。
直播きでは、1株あたり2粒の種を蒔いて、芽が出たら良い方の苗を残して間引きます。なお、トウモロコシの株は倒れやすいので、私は1ヶ所に2株育てる”2本立ち”栽培にしています。その場合は、1ヶ所に10cm位離して、3~4粒蒔きます。
トウモロコシに種の蒔き方条間は70cm、株間は1本立ちなら30cm、2本立ちなら50cm。種は、三角に長く尖った方を下に向けて埋めると、発芽・生育効率が良いそうです。ただし、それが本当かどうか、私は確認したことが無いので、あしからず(汗)。種を埋める深さは、2~3cm。ちょうど人差し指の第一関節まで土に押し込めば、その位の深さになります。あまり浅いと、鳥に狙われることもありますが、今時のトウモロコシの種は、赤色をした忌避剤が塗られているので、滅多に鳥に食べられる様なことはありません。どうしても鳥害に合いやすい場所では、株が育つまで、防鳥ネットを掛けましょう。
種まきと収穫時期
 
【土壌・施肥】
適応範囲は広いですが、肥沃な土地で育ったトウモロコシは味が違います!(笑)。種まき、あるいは植え付けの2週間前までに、たっぷりの堆肥と石灰を入れ、深く耕しておきましょう。
【植え付け】
トウモロコシの条間・株間育てた苗か、買った苗を植え付ける場合は、本葉が2~3枚、草丈15cmくらいが定植の適期 。条間70cm、株間30cm(2本立ての場合は50cm)に定植します。ポット内の苗をばらして植えても構いませんが、できるだけ根を傷めないようにしましょう。あまり傷めすぎると、定植後の生育に影響が出ます。

 3.管理と収穫

管理

株回りの草が伸びてきたら、草取りを兼ねて、2~3回の追肥と土寄せを行います。

実入りのよい、太くて甘いトウモロコシを成らすには、肥料も必要ですが、それ以上に潅水が重要です。生育初期は、晴天が続くようであれば1週間に1~2回ほど潅水しましょう。そして、雄穂(=雄蕊;ゆうずい)が出た後は、さらに潅水の量を増やします。特に、雌花のヒゲが伸びてからの水切れは、実入りに大きく影響を及ぼします。トウモロコシは夜間に実を太らせるので、水遣りのタイミングは日が傾いた夕方がベスト。もし夕方の水遣りを忘れたり用があって出来なかった場合は、翌日の早朝に潅水しましょう。夏場の炎天下での潅水は、太陽で熱せられた土中の水分が高温になり根を痛めてしまうので厳禁です。

雄穂が出始めると、その花粉を頼りにアワノメイガが寄ってきて、卵を産み付けます。アメノワイガの幼虫が実や茎に入り込まないようにするには、農薬(トレボン乳剤など)を散布するとともに、受粉が済んだ後の雄穂は早めに刈り取ってしまうといいとのこと!。しかし、雄穂を刈り取っただけでは、どうしてもアワノメイガの餌食になってしまうので、なかなか無農薬でキレイなトウモロコシを育てるのは難しいです…(汗)。

ヤングコーンとトウモロコシの髭次におすすめしたい管理作業が、2番実の摘果。土の付け根から別れた脇芽を欠く必要はありませんが、大きく実入りのよいトウモロコシにするためには、一番上の雌花だけを残して、その下の雌花は摘み取りましょう。残しておいても、腹の足しくらいにはなりますが、あまり良いトウモロコシにはなりません…。少し大きく成りだしたくらいに摘み取ると、「ヤングコーン」として食べることが出来ます。私は味噌汁の具にするのが好きですが、糠漬けにしても、結構イケましたよ!。また、雌花のヒゲ(穂、絹糸とも)も、おひたしにして頂くことも出来ます。旬の味として珍重する人もいますが、私はヤングコーンだけで十分です(笑)。

ちなみに、沢山ある雌花のヒゲの1本1本が、トウモロコシの実の1粒1粒に繋がっています。トウモロコシを沢山育てていれば、自然受粉でも問題ありませんが、本数が少ない場合は、人工授粉した方が、実入りをよくすることが出来ます。雌花の髭が伸び切った頃に、雄穂を切り取って、花粉を雌花に振り掛けてあげましょう。

収穫

実は、この収穫のタイミングの見極めが、トウモロコシ栽培の中で一番難しいんじゃないか?と思えるほど(笑)。早すぎても、遅すぎても、美味しくありません。かといって、一度には沢山食べきれないし…(汗)。

トウモロコシの収穫適期の見分け方まず、雌花のヒゲが、完全に根本まで茶色く変色するまで待ちましょう。茶色くなったヒゲの実を順番に握ってみて、太ったものから試しに収穫して食べてみましょう。慣れてくれば、先っぽの皮を剥いて実の粒の色艶と大きさを見ただけで、ほぼ食べごろかが判断できるようになります。

トウモロコシの収穫は朝方に行い、出来るだけ鮮度のよいその日のうちに調理することをお勧めします。保存する場合は、茹でて冷凍した方が美味しいそうです。

おすすめの食べ方

最近流行りのトウモロコシの食べ方は、数枚の皮を付けたまま、丸ごと焼くか、電子レンジでチンするレシピ!。テレビ番組での情報によると、電子レンジを使う場合は、1本ずつ入れ、500Wで5分。その後、根元側の実と皮が剥がれる位置を包丁で切って、ヒゲを持って振れば、スルッと皮がむけて実が下に落ちます!(笑)。
私もこの番組を観て、さっそく試してみましたが、正直なところ、個人的には茹でた方が美味しいと思いました…(汗)。茹で方にも、水から茹でる方法と、お湯から茹でる方法がありますが、私は“水から”中火で長めに茹でる派!(笑)。湯で時間は、鍋を火にかけてから、だいたい14分くらいです。ちなみに、塩は入れません。

トウモロコシご飯のレシピ1また、「トウモロコシご飯」も美味しいので、絶対におすすめです!。作り方は簡単、ご飯を研いで通常の水加減でセットします。炊く直前に、トウモロコシの実を包丁でそぎ落として中に入れ、残った芯も半分に切って投入。後はスイッチを入れて、ご飯が炊きあがるのを待つだけ。塩や醤油、酒やダシなどは、お好みで入れてもいいですが、私的には一切不要!。また、トウモロコシの実をキレイに外そうなんて思う必要はありません。浅くなろうが深くなろうが、適当に包丁でザクッと削ぎ落とすだけで、炊き上がれば十分キレイな粒になります。さすがに芯は食べられないので、炊き上がったら芯は捨ててください。この芯から、甘みと旨味(ダシ)が出て、とても美味しいトウモロコシご飯に炊き上がりますよ(笑)。

トウモロコシご飯のレシピ2お米の量とトウモロコシの量との関係は、好き好きで!。我が家では通常、お米2合にトウモロコシ1本を入れて焚いていますが、ちょっとトウモロコシの味が勝つ感じで、私は大好きです。お米の味を重視したいなら、3合に1本でもいいですし、逆にトウモロコシ大好きなら、1合に1本でも美味しくいただけます。

美味しすぎて気になるのは、そのカロリー。トウモロコシも立派な穀物なので、お米+トウモロコシは、穀物の二重奏になってしまいますが、美味しすぎて、普段より沢山ご飯を食べてしまいがちです…(汗)。トウモロコシのカロリーは、1本あたり200kcal前後だそうです。お米1合(150グラム)は 537kcalだそうなので、お米2合だと約1,000kcal。つまり、白米よりトウモロコシご飯の方が、同じ白米の量なら、カロリーは2割増しといったところ(お米2合+トウモロコシ本=1,200kcal、お茶碗一杯がその1/4だとすると約300kcalです)。カロリーを控えるなら、何時もよりお茶碗に盛る量を、2割ほど少な目にしないといけません。でも、トウモロコシは食物繊維も豊富ですし、さほど気にする必要はないかもしれません。どうしても気になる方は、おかずの量を少し減らしましょう!。ただし、トウモロコシご飯が美味しいからとご飯をお代わりしたら、あっという間に主食のカロリーが、何時もの2倍以上になってしまいますよ(笑)。


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