サツマイモの育て方

都会からリタイアして地元の田舎に戻り始めた家庭菜園、少しずつ学んだ野菜の育て方のコツをまとめてみました。

 1.サツマイモ栽培のキモとコツ

サツマイモとは

サツマイモ(薩摩芋)は、ヒルガオ科サツマイモ属の植物で、その塊根(養分を蓄えている肥大した根)を食用します。ちなみに、ジャガイモやサトイモは、肥大化した根(塊根)であるサツマイモとは違い、地下茎が肥大化した茎(塊茎)なんだそうです!。両者の見分け方は、”さつま芋”には細い根っこが生えていますが、”じゃが芋”や”里芋”には根が生えていません。小学3年生の理科で習うそうですよ…(笑)。また、『”ヒルガオ科”の花が咲く野菜は、他にもあったぞ!?』と思い返してみると、確かにありました、「クウシンサイ」(=ヨウサイ、エンサイ)です!。

クウシンサイの花サツマイモもクウシンサイも、秋になると、アサガオ(ヒルガオ)の様な大輪のキレイな花を咲かせます(笑)。サツマイモの原産地は南アメリカ大陸の熱帯地方とされ、16世紀にフィリピンから中国を経由して、日本の琉球(沖縄)へと伝わり、1600年代前期(江戸時代初期)に薩摩経由で日本中に広まったことから、「薩摩芋」と呼ばれる様になりました。荒れ地や痩せ地でも育ちやすく、連作も可能で、デンプン質が豊富で栄養価も高いサツマイモは、江戸の開墾時代から戦中戦後の食糧難の時代まで、日本人の貧しい食生活を下支えした、貴重な食糧でした。

ただし、痩せた砂地の土地では育てやすいサツマイモも、水はけが悪い粘土質で、土が直ぐに固くなってしまう我が家の畑では、逆に育て難い野菜の代表格でもあります。特に収穫のため土を掘り返す時に、土が固いため手で芋を掘り起こすことが出来ず、スコップを使うことになるのですが、スコップを使うと、どうしても芋を傷つけてしまいがちです。すると、傷ついた芋は、すぐに腐ってしまい、保存が出来ません(汗)。しかし、最近人気のしっとり系やネットリ系の品種のサツマイモを、貰って食べると、これが美味しいこと!(笑)。そこで、ぜひ自分でも、この美味しい新しい品種のサツマイモ栽培に再びチャレンジしてみたくなり、マルチを使って、粘土質の畑でも上手にサツマイモを育ててみたいと思います!。


【品種】
サツマイモは、家庭菜園では一般的に、5月頃にホームセンターや種苗店などから苗(挿し穂)を買ってきて、それを植えて育てます。色々な品種を育ててみたいところですが、多くの店では、苗は20~25本束で売られていることが多く、家庭菜園では1束でも多すぎる程。たまに、10本束で売られている店もあるので、もし状態の良い苗が残っていたらラッキーです!。
サツマイモの品種は数多く、出荷用に作付けされている品種だけで、約60種類もあるそうです!。味の違い、食感の違い、色の違いなど、こだわると切りがありません(汗)。ここでは、一般的に多く出回っていて手に入りやすい品種で、素人でも作りやすくて美味しい、昔ながら人気の「①ほくほく系」と、最近特に女性に人気の「②ねっとり系」、そして両者のいいとこどりをした中間の「③しっとり系」で、それぞれの代表品種を選りすぐって紹介します。
①ほくほく系金時/紅あずま
昔から大人気で、サツマイモと言えば”これが定番”と言われるほど人気第一なのが、西の「金時」(きんとき)と、東の「紅あずま」(紅東)。ホクホクな焼き芋が食べたいなら、これ一択。天ぷらにしても美味しく食べられます!。育てやすく収量も多いので、家庭菜園向きの品種です。
②ねっとり系安納芋
近年スーパーの店頭で焼き芋が売られる様になった”火付け役”とも言われるのが、特に女性に人気の、ネットリと甘い蜜がこぼれ出す、糖度が高くて水分多めの「安納芋」(あんのういも)。蜜芋とも呼ばれるほど、とても甘くてネットリとした食感は、まさにスイーツそのもの、ぜひ焼き芋で頂きましょう!。在来種に比べると、栽培はちょっと難しいです。
③しっとり系紅はるか
最近登場した「紅はるか」(2010年品種登録)は、安納芋に負けず劣らず甘いのですが、ほくほくな食感から後味がスッキリしているため、ネットリした強烈な甘さが苦手な方や男性に人気です。焼き芋以外にも、スイートポテトなどお菓子作りにも合うので、安納芋よりレシピは広がりそうです。貯蔵性が高いのも、人気の秘訣です。紅はるかよりも新しい品種で弟分にあたる「シルクスイート」も、甘くてしっとりしながら絹のようになめらかな舌触りが特徴で、最近の人気品種です。
【連作障害】
サツマイモは連作の影響を受け難く、連作も可能です。しかし連作すると、ネコブセンチュウなどの病気が発生することもあり、可能であれば翌年は別の場所で育てた方がいいでしょう。
ネコブセンチュウの予防に役立つコンパニオンプランツとして、「マリーゴールド」がよく知られていますが、サツマイモは育つと葉が密集して茂るため、マリーゴールドも負けてしまうのが残念です(汗)。
【病害虫】
サツマイモは比較的病害虫に強く、家庭菜園でも無農薬栽培で育てやすい野菜のひとつです。まれに、土中に潜むヨトウムシやコガネムシの幼虫によって、葉や茎、塊根が食害される被害に遭う場合があります。未熟堆肥が入った圃場や、他の野菜で被害が発生している畑では、サツマイモの苗(挿し穂)を植える前に、土に「ダイアジノン粒剤」や「オルトラン粒剤」などの殺虫剤を撒いて耕しておきましょう。

 2.植え付けと管理

ジャガイモは、種イモそのものを伏せて(埋めて)、種イモから生えてきた茎の根元に新しいジャガイモ(肥大化した茎)が出来ますが、サツマイモは、5月頃に種イモから生えてきた茎の先端部分の20~30cmほどを切り取り、その茎の一部(苗、挿し穂)を挿し木(挿し芽)の様に植えて育てると、挿し穂の節の部分に新しい芋(肥大化した根)が生ります。

苗(挿し穂)の入手方法は、以下の3通りありますが、家庭菜園では、苗は買うのがおすすめ。

  1. 種イモから苗を育てて、苗を自家採苗する
  2. 親株を購入して育て、苗を自家採苗する
  3. 苗を購入する

サツマイモ農家では、苗(挿し穂)を買っていたのでは商売にならないため、自家育苗します。3月頃から温床を作って、前年に収穫し貯蔵していた種イモを伏せ込み、暖房しながら苗を育てます。しかし、栽培数が少ない家庭菜園であれば、育った苗を買てきた方が、遥に楽で手っ取り早いです(笑)。苗の価格は、1本あたり 30円~50円くらいで、1苗から数本のサツマイモが収穫できます。なお、種イモから発芽した親株を買ってきて、その親株を植えて育て、分岐した脇芽から苗を自家採取する方法もあります。親株は1苗が120~150円くらいなので、沢山挿し穂が採れれば苗を買うより安上りですが、手間暇が掛かります(汗)。

【気象環境】
南アメリカの熱帯地方が原産のサツマイモは、発芽・生育適温は20度~30度と高く、高温と日照を好み、日陰になるような場所は栽培に適しません。
【植付の適期】
暖地では4月下旬ごろから、寒冷地では5月上旬ごろから、ホームセンターでサツマイモの苗(挿し穂)が売られ始めますが、人気品種の苗や良い苗は、先を争う様に売切れてしまいます…。コロナに纏わるデマ情報で、トイレットペーパー等の紙製品が一時店頭から消えてしまった様に、サツマイモの苗も競争となると、どうしても気が逸って、早く苗を買って、早植えしてしまいがちです(汗)。しかし早植えすると、芋が巨大化したり、ネズミに食われたりと、あまり良いことがありません…。良いことと言えば、早く収穫できて、秋のお彼岸の天ぷらにサツマイモが使えるってこと位でしょうか(笑)。私の経験則では、霜が降りる前、出来るだけ遅くに収穫期を迎えた方が、ちょうど手ごろな大きさで形がよい芋が採れると感じています。
一般的にベストな植え付けのタイミングとされているのは、梅雨入りの2週間くらい前。苗を植え付けて2週間ほど経ち、活着したころに梅雨入りしてくれれば、葉の生育が一段と良くなります。関東甲信地方の梅雨入りは、平年6月上旬頃なので、サツマイモ苗の植え付け適期としては5月中~下旬頃になります。ただ、この時期にサツマイモの苗が売り切れになっていては、元も子もありません…。そこで私は、苗が手に入りやすい5月上旬に隣家と分け合うなどして少なめの苗を買って植え付け、6月中旬~下旬に弦が伸びてきたら先を切って挿し穂の苗を自家採取して植え付けます!。この時期に植え付けると、収穫は11月上旬、長野だと霜が降りて葉が枯れる頃です。
サツマイモの植え付けと収穫時期
【土壌・施肥】
PHが 5.5~6と比較的酸性土の痩せ地でも育ちやすい作物です。肥料、特に窒素分が多いと、ツルボケして葉ばかりが茂り、いい芋が採れません。そのため、肥えた土地では、無施肥・無石灰でも大丈夫です。通常でも、元肥も追肥も、他の作物の半分くらい、控えめに施します。乾燥には強いですが、多湿には弱いため、水はけの悪い粘土質の我が家の畑では、30cmほどの高畝で栽培します。なお、畝を立てる前に、畝の下に藁を敷いてから畝を立てると、水はけの確保と同時に、藁が分解されるときに窒素分が吸収され、芋が生る頃には肥料の役目を果たすと言われています。

畝づくり

苗を定植する1週間前に、サツマイモを栽培する場所に畝を立てます。痩せた土地では少量の肥料を全面撒布し、20~30cmの深さまで耕起します。稲わら(藁)があれば、畝の底に藁を敷いてから、1条植えでは畝幅 50~60cm、高さ 20~30cmの高畝に仕上げます。サツマイモは植えたら、収穫までほとんど手間が掛からない作物ですが、葉が茂るまでの草取りだけは欠かせないので、さらに手間を省きたい人は、マルチを掛けましょう(笑)。白マルチや紙マルチがあればいいですが、真夏には葉が茂ってしまうので、黒マルチでも構いません。マルチをした方が、栽培期間も短くなります。

植え付け方

サツマイモ苗の植え方苗の植え方には、何通りかあります。一番簡単なのは、苗を真っ直ぐ縦に植える「①垂直植え」。芋の数は採れませんが、味が凝縮した、丸っこくて大きな芋になりやすいです。苗の節数が少なかったり、逆に長くて多すぎる場合には2本に切って、垂直植えにすると良いでしょう。しかし大抵の人は、数多くの芋を収穫したいので、畝に沿って苗を横向きに植える、「②斜め植え」や「③水平植え」、「④船底植え」にします。「垂直植え」や「斜め植え」では、畝に棒を刺して穴を開けて、その穴に苗を挿して植え付ければ簡単ですし、マルチに開ける穴も小さくて済みます。また、乾燥しやすい畑や、干ばつにも強い植え方です。一方、「水平植え」や「船底植え」では、畝に沿った方向にカッターで苗の長さにマルチを切ってから、穴を掘って植え付けます。「水平植え」は、苗を浅く植えることで芋の生育は良くなりますが、干ばつには弱くなります。一方「船底植え」は、芋のできる深さが均等になるので、形の揃った沢山の芋が採れると言います。まずは、自分の畑ではどの植え方が適しているのか、いろいろ試してみましょう(笑)。

サツマイモの苗の植え方

苗と苗の間隔は、垂直植えなら 40cmほど、横向きに植えるなら 30cmほど開けます。したがって、2mほどの畝に、垂直植えなら5本程度、横向きに植えるなら4本程度の苗が植えられます。10本の苗を植えるには、1条植えだと、最低でも4~5mほどの畝の長さが必要になります。

管理

サツマイモ苗の活着後苗を植えて数日経つと、葉が枯れ出します…(汗)。『失敗した~』と焦りますが、我慢しつつ、2週間ほど様子を見ていると、ちゃんと葉が復活します!(笑)。なんだか、ホッとしますね。

苗が活着すれば水遣りの必要もなく、マルチがしてあれば草取りの心配もさほど無く、サツマイモは本当に手の掛からない、孝行者の野菜です(笑)。植え付けから約一か月も経ったころから、サツマイモの成長は一気に加速を始めます!。この段階で、きちんと草取りをしておけば、後は草取りをしなくても、サツマイモの繁った葉がびっしり地面を覆いつくしてくれるので、草に負けることはありません。マルチをしてあるなら、草取りを兼ねて畝の周りの土を軽く耕し、敷き藁を広げてあげれば更に万全です(笑)。藁が無くても、ちょうどこの頃に、収穫が終わったエンドウの棚を撤去すると思うので、枯れたエンドウのツルを、サツマイモの畝の周りに敷いてあげましょう!。必要があれば、追肥もこの頃までに済ませます。

ただ、ツルが伸びて葉が茂ってきた頃に、「つる返し」という作業をした方が、いい芋が採れるとも言われています。サツマイモは、伸びたツルが地面に付くと、節のところから根が生えて、その根の先に芋が出来る性質があり、そうなると苗の養分が分散してしまい、いい芋が生らないというのが理由です。そこで、ツルが伸びて葉が茂ってきたら、地面に付いたツルを地面から引き剥がし、ツルの天地を逆転(反転)させることを、”つる返し”と言います。この作業が、真夏の暑い時期に重なるので、サツマイモ農家では大変な重労働とされていました。しかし、最近の品種は、品種改良が進み、伸びたツルの先に芋は出来にくくなっているので、『つる返しは 必要無い』とされています(汗)。むしろ、つる返しの作業は株を傷め、生育不良に繋がるとも言われています。果たして、つる返しはやった方がいいのか、やらない方がいいのか?、私は面倒なので、しませんが…(笑)。


 3.収穫と貯蔵

サツマイモのツルは、夏の間に放っておくと、どんどん幅を利かして広がっていきます。広い畑ならいざ知らず、邪魔になってきたら、ツルの端を持ち上げ、天地を返して、畝の中に戻してやりましょう。少々乱暴なやり方ですが、サツマイモの生育には何ら支障ありません。

サツマイモの葉が茂る様子


収穫

サツマイモの収穫適期の目安は、『苗を植えてから 120~150日くらい』と言われています。つまり、約4か月~5か月ほどで、なんと1ヶ月も差があります…(汗)。えらくいい加減な目安ですが、土の中の作物は、その年の天候によって、生育にそれだけ差が出るってことでしょうか?。

9月下旬になったら、サツマイモの試し掘りをしてみましょう。

また、試し掘りと同時に、サツマイモの畝の周りに、モグラの掘った穴や通り道が無いか、よく観察しましょう。モグラの掘った穴を通って、ネズミがやってきて、土の中のサツマイモを先に食べられてしまうことがあります!。

試し掘りをして、サツマイモが十分多くなっていれば、収穫適期です。また、もしネズミの食害にあっていたら、速攻で収穫しましょう。ネズミは未熟なサツマイモは齧りませんので、美味しいサツマイモが出来た証拠にもなります。試し掘りをして、まだ小さい様であれば土に戻し、1週間~10日ほど様子をみて、また試し掘りを繰り返します。どんなに遅くても、霜が降りる1週間くらい前までには、収穫を終える様にしましょう。

家庭菜園での素人判断だと、収穫が早すぎるということは滅多になく、むしろ念には念を重ねているうちに、収穫が遅くなり過ぎてしまうケースが大半かと…(汗)。収穫が遅れると、芋の形が崩れたり、芋が巨大化したりします。自家消費するには、いびつな形だろうが巨大化していようが、美味しければ、それも御愛嬌で済みますが、料理するには面倒なので、出来れば形のいい芋に揃えたい所です。採り遅れないことも大事ですが、苗の植付時期が早すぎたり、苗を深植えし過ぎるのも、芋が巨大化する原因に繋がるので、来年はその点に注意して苗を植えてみましょう!。


掘り起し

収穫時期を迎えたら、晴の日が続き、土が乾いている天気の良い日を狙って、サツマイモの収穫をしましょう!。

サツマイモの収穫で重要なことは、①よく乾かすことと、②傷を付けないことです!。表面が湿気ったままのサツマイモや、傷が付いたサツマイモは、すぐに傷んでしまい、長く貯蔵できません。

まず、生い茂ったツルを株元で切り、撤去します。次に、マルチを掛けていたらそれを剥ぎ、畝の端から慎重に、土を掘り起こしていきます。土が硬ければスコップやシャベルを使っても構いませんが、サツマイモは絶対に傷つけない様に、遠目から掘って、近づいたら手で探ってサツマイモを掘り起こします。

天日干し

サツマイモは、カボチャと同じく、収穫したての新鮮なものはあまり美味しくありません。貯蔵することで、徐々にデンプンが糖に変わり、甘みが増します。プレミアムなサツマイモは、温度と湿度を管理しながら1年間も貯蔵するそうですが、一般家庭ではそうはいきません(汗)。

掘ったサツマイモは、土を落とさず、その日の日中、そのまま畑に並べて乾かします。掘ってすぐに土を落とそうとすると、傷つけやすいので注意してください。もちろん、水洗いなどは厳禁です(笑)。夕方になったら仕舞い、それから2~3日ほど天日干しをして、よく乾いてから、土を払い落とします。さらに1週間ほど日陰干しをすると、日持ちが良くなります。

貯蔵

サツマイモの貯蔵に適した温度は 15度前後で、湿度は 90%前後です。冷蔵庫の野菜室の温度は 6度前後なので、サツマイモやカボチャの保存には適しません。よく乾いたサツマイモを、できれば丁寧に1本ずつ新聞紙で包んでから段ボール箱に入れ、凍みない様にして、土蔵や物置、床下などで貯蔵すれば、冬中は食べ続けることが出来ますよ。


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