セロリの育て方

都会からリタイアして地元の田舎に戻り始めた家庭菜園、少しずつ学んだ野菜の育て方のコツをまとめてみました。

 1.セロリ栽培のキモとコツ

セロリとは

セロリ(セルリ、セルリー)は、セリ科の植物で、セリやニンジン、パセリ、コリアンダー(パクチー)などと同じ仲間です。原産地は諸説ありますが、日本で栽培されている品種の元は、ヨーロッパと言われています。日本へは、秀吉の命を受けて朝鮮へ出兵した加藤清正が持ち帰ったことで「清正人参」という名が付いたとか、オランダ人が長崎に伝えたことで「オランダミツバ」という名が付いたとの説がありますが、いずれも定かでありません(汗)。日本でセロリが本格的に栽培される様になったのは、戦後のことです。

都道府県別の生産量では、長野県が全国1位で、主要産地は原村など諏訪市や松本市周辺の市町村。長野県産のセロリの旬は、夏から秋にかけてで、この時期の原村を含むJA信州諏訪の出荷量のシェアは、なんと、全国の90%を占めます!。セロリは、英語の celery から付いた名前ですが、原村の生産者は、主要産地のフランスに則って、フランス語の céleri から”セルリー”と呼んでいます。原村に行って、『セロリを下さい』と言うと、『セルリーね』と言い直されますので、ご注意ください(笑)。

山崎まさよし作詞・作曲の「セロリ」(SMAP)で、『育ってきた環境が違うから 好き嫌いはイナメナイ、夏がダメだったり セロリが好きだったりするのね、・・・』と歌われているとおり、その独特の香りや食感から、好き嫌いが強い野菜のひとつですね(汗)。ところが先日、NHK「知るしん」という番組で、原村を訪れた梅沢富美男さんは、セロリが苦手と言いながらも、採れたてのセルリーを『美味しい!』と言って、生でバクバク食べていました!。新鮮なセルリーは、香りのクセもスジも、ほとんど気にならない様です(笑)。

しかし、セロリはとても我儘な野菜で、手間暇を掛けて過保護に栽培しないと、ちゃんと育ってくれません(汗)。野菜の中でも特に肥料食いで、かつ、夏場には毎日水やりが必要という、実に面倒な野菜です。本当にセロリが大好きという人にだけ、家庭菜園での栽培チャレンジをおすすめします。他の方は、どうぞ信州各地にある、”道の駅”や”産直売り場”で、出来たセロリをご購入下さい!(笑)。


【品種】
セロリの品種は、さほど多くありません。品種群としては、葉柄の太さや抽苔の早い遅いによって分けられますが、黄色種・緑色種・中間種・赤色種・白色種と、葉柄の色で大別するのが一般的。
日本のスーパーで売られているセロリの多くは、中間種に当たる薄緑色をしたセロリで、代表的な品種は、米国のコーネル大で育成された「コーネル619」です。茎が太いのに筋が少なく、グリーンセロリより香りが穏やかなのが特徴です。長野県では、コーネル系の品種を改良した、「幸みどり」「諏訪3号」「松本1号」「安曇野」といった、産地オリジナル品種が栽培されています。
一方、特にアメリカで人気の緑色種は、茎が緑色で、香りが強いのが特徴的。こちらは日本生まれの小型品種、「トップセラー」が人気です。
茎が白くて細い白色種(ホワイトセロリ)は、大きくなった三つ葉の様で、スジも柔らかでスープやサラダにおすすめですが、日本では余りお目に掛かりませんね。タキイ種苗の「ミニホワイト」なら、水耕栽培も可能なので、試しにご自宅で作ってみるのは如何でしょうか?。
【連作障害】
セロリは、連作障害が発生しやすいとされる代表的な野菜に含まれます。2年以上は、セロリを含むセリ科の野菜(ニンジンやパセリ、ミツバなど)を栽培していない場所で栽培しましょう。
【病害虫】
害虫では、ハダニやアブラムシが付いたり、株元をヨトウムシやナメクジに齧られたりしますが、滅多なことにはなりません。
問題なのは病気の方で、肥料好きで水好きなのに、冷涼な気候を好み高温と低温に弱いため、梅雨や台風、秋の長雨など、特に高温期の多湿により、軟腐病や萎黄病、葉枯病、斑点病など、糸状菌(カビ)による病気にかかり易いです。最も頻繁に発生するのは、葉の黄化や奇形化が発生する萎黄病。土壌伝染性の病害で、根本的な対策は、連作の防止と排水性の確保、未熟堆肥を使わないこと等が重要ですが、発生してしまってからではどうにもなりません…(汗)。病気の株は、見つけ次第早めに撤去するか、「ベンレート水和剤」など、農薬の力に頼りましょう。

 2.種まきと植え付け

セロリの種は比較的安価で売られているうえ、最も一般的なコーネル619号(新コーネル619号)は固定種で、自家採種も可能です。栽培したうち1株の芯部分の茎を何本か残しておけば、翌年の5月には大量の花を咲かせ、ビニール袋一杯分くらいの種が採れます!。

しかし、裏を返せば、大量の種を蒔いても、なかなか育つのが難しいという証でもあります。特に苗づくりが大変で、種を蒔いてから定植できる大きさの苗に育つまでに、2ヶ月以上も掛かります。その間の水やりが欠かせませんし、暑くなる前に大きな株に育てておかないと、平地の暑い夏を乗り切れないため、3月初めには種まきをして、保温育苗する必要があります。

したがって、セロリ栽培が初めての方には、まずは購入苗からの栽培をおすすめします。種は安いのに、苗は高くてビックリしますが、致し方ありません…。お財布と相談して、1-2本か、2-3本で妥協し、物は試しとチャレンジしてみては如何でしょうか?(笑)。

種まき

タネから育てる場合は、出来るだけ早い時期に種まきを始めましょう!。冬でも氷点下にはならない様な温暖地であれば、年明け早々に種まきをすれば、本格的な夏が来る前に収穫が可能です。しかし、長野盆地の露地栽培では、それは無理…(汗)。出来るだけ手間を掛けずに育苗するためには、3月上旬以降になります。

セロリの幼苗育苗箱かポットに、タネを筋蒔きかバラ蒔きし、ビニールトンネル内で保温して、発芽を促します。セロリの種は好光性なので、覆土は出来るだけ薄く掛けます。そのため、灌水で種が流されない様に、種を蒔く前に培土にたっぷり灌水し、種を蒔いたら軽く手で鎮圧します。気温が氷点下にまで下がる夜間は、室内に入れてあげましょう。発芽した幼苗は、氷点下位までなら滅多に寒害や凍害に合うことはありません。芽が出て以降は、遅々として成長しない苗を毎日眺めながら、根気よく水やりを続けることになります…(汗)。

セロリの若苗育苗箱に種まきした場合は、本葉が1.5~2枚になったらポット上げします。ポット蒔きの場合は、本葉が出たら数本に間引きし、本葉が4~5枚になるまでに1本立ちに仕立てます。


【気象環境】
セロリの発芽適温は15度~20度、生育適温は20度~25度。高温には特に弱く、25度以上になると発育が停滞し、品質も劣化、病害虫の被害も発生しやすくなります。低温には比較的強く、氷点下10度以下にもなる長野の冬でも、外葉は凍みて枯れますが、株自体は越冬し、翌年には抽苔して5月に花を咲かせます。
【播種の適期】
セロリは生育に時間が掛かるため、冷涼地では、春に種まきをして夏~秋採りの1回ですが、温暖地であれば、春まき夏採り以外にも、夏まき冬採りも可能です。
種まきと収穫時期
 
【土壌・施肥】
肥沃で、保水性と排水性が良い土を好みます。セロリは、たいへん肥料好きの野菜として知られています。また、水を好みますが、過湿になると病気が発生しやすい、デリケートな野菜でもあります。植え付ける2週間前に、たっぷりの堆肥と苦土石灰を施し、深めに耕しておきます。植え付け後も、2週間ごとに追肥します。

植え付け

セロリの植え付け本葉が7~8枚になった頃が、定植の適期です。植え付ける2週間前に、たっぷりの堆肥と苦土石灰を施し、深めに耕し、1条植えなら60cm幅、2条植えなら1.2m幅の畝を立てておきます。マルチを掛けると、草取りと水やりの手間が多少省けますし、地温の上昇も抑制できます。定植してから、わらマルチを掛けても構いません。

暑い日に定植する際は、夕方に涼しくなってから行います。植え付ける前には、植穴とポットの両方に、たっぷり灌水しておきます。定植する際の株間は 35~45cm。2条植えする場合の条間は 60cm。条間を狭くしたいなら、千鳥に植え付けましょう。

ポットから取り出した株を、根を出来るだけ崩さない様に、丁寧に定植しますが、一番注意したいのは、深植えしないこと!。鉢土が隠れないよう、株元を盛り上げるようにして植えます。決して、芯葉に土が入らない様に注意しましょう。

セロリ栽培の畝幅・条間・株間

 3.管理と収穫

管理

定植後の主な管理は、水やりと暑さ対策です。

水やりは、涼しい夕方か早朝にします。冷涼な気候を好むセロリは、30度以上になると、生育が滞ります。しかし、昨今の日本の夏は、長野でも最高気温が35度以上の猛暑日が、珍しく無くなってしまいました(汗)。そんな日には、寒冷紗など日除けを掛けて、遮光してあげましょう。ただし、トンネルにしてしまうと、風が通らず温度が上がってしまうので、注意してください!。

追肥は2週間ごと、株元に一握りの化成肥料を施し、草取りを兼ねて土寄せをします。枯れた下葉は、病気の予防のためにも、早めに除去します。

定植後、1か月もすると、株元から脇芽がどんどん出てきます!。主株の茎を太く大きくしたいので、脇芽は早めに欠き取りましょう。欠き取った脇芽も、もうちゃんとセロリの香りがしますので、スープなどに入れて、美味しくいただきましょう(笑)。


収穫

セロリの収穫定植後、2か月半ほど過ぎると、主株の茎もだいぶ肥大化してきます。人様に差し上げるために、株ごと収穫する場合は別ですが、家で食べる分には、外側の太い茎から順番に欠いて、早々に収穫を開始しても構いません!。その方が、長く収穫を愉しむことができますよ(笑)。


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