インゲンマメの育て方

都会からリタイアして地元の田舎に戻り始めた家庭菜園、少しずつ学んだ野菜の育て方のコツをまとめてみました。

 1.インゲン栽培のキモとコツ

インゲンマメとは

普段は「インゲン」と呼んでいますが、正しくは「インゲンマメ」(隠元豆=いんげん豆)のこと。地域によっては「菜豆」(サイトウ)とか、関西から西日本では「藤豆」(フジマメ)、「三度豆」(サンドマメ)とも呼ばれています。原産地はアメリカ大陸とされ、アステカ帝国時代には物納品として徴収されるなど古くから栽培されてきた穀物のひとつです。16世紀にはヨーロッパに伝わり、品種改良され、江戸時代に中国経由で日本に伝わったとされています。

インゲンマメの種類は様々で、若い莢(さや)ごと食べる「サヤインゲン」と、成熟した種子(豆)のみを煮豆などにして食べる「種実用種」があり、莢の太さも、細くて丸い物や、太くて平たい幅広の物があります。また豆の色によっても、赤インゲン豆(金時豆など)や、白インゲン豆(大福豆など)、斑の入ったインゲン豆(うずら豆など)などがあります。

ちなみに、”細いんげん”とよく似た野菜に「ササゲ」がありますが、インゲンマメはマメ目マメ科インゲン属の植物で、ササゲはマメ目マメ科ササゲ属の植物で、分類としてはインゲンとは違う種類の野菜です。ササゲは、細いんげんより、さらに細くて長いのが特徴です。アフリカ大陸が原産で、日本にはインゲンマメより古く伝来し、平安時代には既に栽培されていた様です。ただ、細長い若莢ごと調理する、使い方や料理がほぼ同じなので、食べる方としては、どちらも一緒ですね(笑)。さらに最近、「ササギ」と言う人に出会いました。ササゲを言い間違えて使っているのだろうと思いきや、検索してみると、全国各地で結構使われている様です。ただし、ササゲの方言というわけでは無く、インゲンもササゲも一色単に扱うアバウトな表現みたいです…(汗)。


【品種】
インゲンマメの品種は多様で、莢(さや)ごと食べるサヤインゲンにも「丸莢」と「平莢」があり、成熟した種子(豆)を食べるための「子実どり」の品種があります。さらに、つる性の品種とつるなしの品種とがあり、つるありでは支柱に巻き付いて3mもの高さにまで成長するものもあります。プランターなどで栽培するには”つるなし”を、露地栽培では収量が多く収穫期間も長い”つるあり”品種を選ぶのが良いでしょう。
一般的に多く栽培されているのは、莢ごと食べられる「サヤインゲン」ですが、全国的にスーパーで、丸莢のインゲンマメを総称して「サヤインゲン」、平莢のインゲンマメは「モロッコ(いんげん豆)」などと品種名で売られている売られていることが多いため、”サヤインゲン”というと、丸莢のインゲンマメや、「ササゲ」と同じと認識されていることが多いようです。
しかし当地では、どちらかと言うと、味噌汁や煮物、炒め物に使うにしても食べ応えがあり、柔らかくて甘い、平莢のサヤインゲンが好まれます。平莢いんげんの代表的な品種としては、「モロッコ」(モロッコ豆、モロッコインゲン)や、信州の伝統野菜でもある「穂高いんげん」など。特に穂高系の品種や「グリーンマート菜豆」といった品種は、”霜降り菜豆”とも呼ばれ、霜が降りる頃の遅い時期まで収穫できるため、寒い長野県では重宝されます。また、戸隠や飯綱、大町などの標高の高い高地では、種実を煮豆にする「紫花豆」が特産品として盛んに栽培されています。
【連作障害】
豆類は連作障害が発生しやすいので、豆類の同じ場所での栽培は3~4年開けるのが無難です。
【病害虫】
病害虫の被害は比較的少なく、暑い夏から霜の降りる初冬まで長い期間栽培できる重宝な野菜です。春から夏まで何度も種まきをすることが出来るのが、三度豆(サンドマメ)とも呼ばれる所以です。
代表的な害虫被害としては、葉が茂り出した初期の頃にウリハムシが付いて、葉を食害されることがあります。ウリハムシは、行動が鈍い朝方に捕まえて捕殺する「テデトール」(手で捕る)処置が基本とされますが、圃場が広いとカボチャやキュウリ、アスパラガスなどウリハムシが付く野菜が数多あり、大変です(汗)。ウリハムシには、マラソンやスミチオン乳剤、トレボン、ベニカなど、一般的な殺虫剤が広範に効くので、私は手っ取り早く殺虫剤に頼りがちです…。また、実が着き出すと、インゲンマメゾウムシやハスモンヨトウ、アズキノメイガなど蛾の幼虫が莢に穴を開けて虫が入り込み、豆を食害する被害が発生します。特に秋口になり、株が弱ってくると被害が拡大するため、やはり殺虫剤に頼ることになります。また、代表的な病気では、密植しすぎると、うどん粉病やカビ病の類が発生することがあります。

 2.種まきと支柱立て

種まき

インゲンマメが「三度豆」とも呼ばれる所以は、春から夏まで三度に分けて種を蒔くことで、梅雨の頃から霜が降りる時期まで、長い期間収穫することが出来るからだとか(笑)。

インゲンマメの水耕発根発芽インゲンマメの原産地は中南米の高原地帯とされ、発芽適温はちょっと高くて 20~23度。あまり早蒔きしても、芽が出ません。私の経験則では、”エンドウマメの実が採れ出す頃”(長野だと5月初旬)が、インゲンマメの種を蒔き出す時期で、すると、ちょうどエンドウの収穫が終わる頃に、インゲンの収穫が始まります!。ポット蒔きして保温をすれば、早蒔きも可能ですが、豆類は植え替えすると根を傷めやすいので、直播きをおすすめします。それでも、少しでも早く芽を出したい場合は、キッチンペーパーなどを敷いたトレイに紙が浸る程度に薄く水を張り、そこに豆を入れて暖かい場所に置いておけば、数日で発根しますので、それを傷めないように丁寧に埋めてあげます。ちなみに、インゲンの種(豆)は好光性なので、敢えて暗くする必要はありません。

一方、生育適温は 15~25度と、冷涼な気候を好みます。そのため、梅雨の時期には収量が多かった株も、梅雨明け以降の猛暑の頃は収量ががガクッと落ちますが、涼しくなってくればまた株も復活して実を付けるようになります。なお、豆類の栽培では、夏に水枯れが続くと落花が多く実付が悪くなってしまうので、適宜潅水すると着莢率を上げることが出来ます。また、真夏の暑い最中でも実付のよい、「ハイブシ(南星)」や「ナリブシ」といった品種もあります。

【気象環境】
発芽適温は 20~23度、生育適温は 15~25度と冷涼な気候を好みます。夏の暑さと水枯れには弱いため、長く雨が降らない時は、1週間に一回は、たっぷりと水やりをしてください。
【種まき適期】
暖地では4月中旬から、寒冷地では5月上旬から露地への直播きが可能となり、7月頃まで何回かに分けて種まきすると、長い期間収穫できます。なお、収穫が始まるまでは、播種から約2か月かかるため、南国の暖かい地域であれば、8月に蒔いて年内遅くまで収穫することも可能です。
種まきと収穫時期
 
【土壌・施肥】
豆類は比較的痩せ地でも育ちやすく、逆に肥え過ぎるツルボケしやすいので、施肥は控えめにします。化成肥料が多いとアブラムシが付きやすくなるので、種まきの2週間前に、完熟堆肥と石灰をすき込んでおきます。
豆類は乾燥も苦手ですが多湿にも弱いため、水はけの悪い圃場では、20cmくらいの高めの畝を立てて種まきします。
【種まき】
豆類は多湿を嫌うため、水耕で強制根出しをする場合以外は、種まきする前に、種(豆)を水に浸けてはいけません。土が乾燥している場合は、種まきする前に、蒔き穴にたっぷり潅水し、以後は発芽するまで水遣りも控えます。多湿すぎたり、地温が低いと、発芽する前に豆が腐ってしまいます。
種を埋める深さは 2~3cm、人差指の第一関節くらいですね!。条間は1m以上、株間は30cm以上を基本としますが、つるあり品種の場合は、どの様な支柱を立てるかによりますので、初めての栽培では、まず先に支柱を立ててから、支柱の根本に種を蒔くのが良いでしょう(笑)。

支柱の立て方

インゲンマメの伸び方インゲンマメの茎は、アサガオの様に、イボ竹などの支柱にクルクルと巻き付いて上へと伸びていきます。そのため、基本的に1株に対して1本の支柱を立てますが、実際には面倒なので、1.5~2株に1本くらい…(笑)。支柱の高さは、インゲンはエンドウより遥に高くまで伸びるので、最低でも地上高が1.8m位は欲しい所です。そこで、2.4m以上のイボ竹を使って、支柱を立てます。しかし、高くし過ぎると不安定となり、特に台風などの強風時に倒れてしまい兼ねません(汗)。風に強く、丈夫で安定感のある支柱を立てましょう!。ただし、あまり高くし過ぎても、手が届かず収穫できません…。自分の背丈に合わせた支柱を立てましょう(笑)。

支柱の立て方は、一列に1本の支柱を真っ直ぐ立てる「直立式」と、切妻屋根の様に2本の支柱を上部で結び横に連ねた「合掌型」が代表的ですが、広い畑一面に大量のインゲンを栽培する場合には、4~6本もの支柱を四角錐の様な形に組んで並べて栽培する方法もあります(下写真)。しかし、家庭菜園で数本の苗を育てる程度であれば、1列に支柱を立てる「直立式」が、収穫がしやすく、風通しもよくて病害虫が発生し難く、おすすめです。ただし、風への抵抗力は弱いので、しっかりとした丈夫な杭を両端に深く打ち込み、物干し竿など丈夫な横通しの棒をしっかり括り付けて、決して台風などが来ても倒れない様に組み立ててください!(笑)。苗が10本以上になる様であれば、「合掌式」にした方が安定しますが、裾の幅を広げて支柱の傾斜を大きくすればするほど安定する反面、内側の収穫作業が面倒になります。

支柱の立て方
戸隠での紫花豆の伝統的な支柱の立て方

 

 3.管理と収穫

管理

インゲンマメ栽培における管理作業は、特段、書くことが何もありません…(汗)。支柱に絡み損ねたツルを支柱に誘導してあげたり、虫が付いたら捕殺するか消毒をし、草が伸びてきたら草取りをしましょう(笑)。

インゲンマメの棚の下は、ちょうど日陰になるので、今年は棚を合掌仕立てにして、その下で生姜を栽培してみました。早蒔きしたインゲンの棚は、7~8月の日差しの強い時期には葉が茂り、日差しが欲しくなる9月になると葉が枯れるため、生姜栽培の日陰作りにピッタリでした!(笑)。

インゲンマメの成長

収穫

インゲンマメの実の付き方インゲンマメの多くの花は白いですが、品種によっては赤や紫色の花も咲かせます。夏のシーズンに戸隠や飯綱を訪れると、「紫花豆」が所狭しと赤紫の花を咲かせていて、とてもきれいですよ!。花が咲いてから、約2週間くらいで収穫できるまでに莢が大きくなります。ヘタの部分をハサミで切って、収穫しましょう。長野の方言で『ずくなし』の私は、ハサミを使うのは面倒なので、ヘタ近くの莢の部分を指先でつまみ、へし折って収穫します(笑)。

花が咲いても落花してしまい、着果せずに実が全然付かない場合は、肥料過多によるツルボケが主な原因です。特に葉を茂らす養分になる窒素分が多いと、ツルボケしやすくなります。土の中にある肥料を取り除くことは不可能なので、ツルボケしたら、対処療法に頼るしかありません(汗)。

ツルボケした場合の対処方法

  1. 伸びすぎたツルを思い切って切り詰めて、新しい脇芽を伸ばすことで、肥料を消費させます。
  2. 実の養分となるリン酸の単肥を追肥することで、窒素抜きを促します。植物は、肥料の各養分単体ではなく、バランスによって吸収されるので、リン酸分を多く施すことで、相対的に窒素分を減らしてあげます。
  3. 根切りをして、肥料の吸収を一時的に滞らせます。マルチをしていたら剥ぎ、草を伸ばし、肥料の流出と消費を促しましょう。
  4. 一番簡単で手っ取り早いのは、別な場所に種を蒔き直すことです!(笑)。3度豆と言われる様に、秋の遅くまで収穫できるインゲンマメなら、7月いっぱいまで種まき可能です。

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