ニンジンの育て方

都会からリタイアして地元の田舎に戻り始めた家庭菜園、少しずつ学んだ野菜の育て方のコツをまとめてみました。

 1.ニンジン栽培のキモとコツ

ニンジンとは

ニンジン(人参)は、ヒマラヤ山脈の西に連なるアフガニスタン領の高地の原産で、セリ科ニンジン属の二年生植物です。冷涼な気候を好み、春まき栽培と夏まき栽培以外に、暖かい地域では冬まき栽培も行われていますが、一般的には、夏まき・秋~冬収穫が作りやすいです。セリ科の野菜には、セロリやパセリ等がありますが、家庭菜園で沢山作る野菜ではないので、滅多に作付場所に困る様なことはありません。夏まき栽培では、大抵はジャガイモの収穫が終わった後に種を蒔けば、連作も気にならず、肥料やりも不要です(笑)。ニンジン栽培のキモは、何と言っても、「芽出し」にあります。生育期間は3か月くらいと長く掛かりますが、発芽にさえ成功すれば、後の生育管理には、ほとんど手間は掛かりません。

【気象環境】
ニンジンの発芽適温は15~25度ですが、生育適温は18~21度と低めで、冷涼な気候を好みます。しかし、生育期間が長いため、春まきしたニンジンが収穫できるのは初夏の暑いころ、長くは畑に置いておけず、貯蔵も難しい。そのため、夏まき栽培が一般的です。しかし、寒くなる前に収穫するには、今度は夏の暑い盛りに種を蒔かなければなりません(汗)。そもそも、ニンジンは発芽率が悪いので、種まきのタイミングと芽出しのコツが重要になります!。
【品種】
大きくは、東洋系ニンジンと西洋系ニンジンとに分けられます。京料理でよく使われる「金時ニンジン」(京人参)など東洋系ニンジンは、甘みも強いですがニンジン特有の臭いも強く、あまり出回っていません。一般によく作られ流通している人参は、ニンジン臭が少なく甘みがあって柔らかい、西洋系ニンジンです。中でも、手ごろなサイズで使い勝手のよい五寸人参が主流。ただし春まきでは、収穫が早い三寸人参の品種の方が作りやすいです。最近では、「ピッコロ」や「ベビーキャロット」の様に、2ヶ月位で収穫できるミニ人参もあります。
春まきと夏まきとでは、それぞれ作りやすい品種が違います。春まきでは「向陽」などが、夏まきでは「黒田五寸」系の人参が売れ筋。遅蒔きの夏まき人参は、秋に収穫せずそのまま畑に置いておくことで、冬の間も新鮮なニンジンを収穫することが可能です。しかし、長野県の様に寒い地域では、人参の頭が地面から出ていると、そこが凍みて痛んでしまいます。そのため、雪が降る前に土寄せをして、地面から出たニンジンの頭を土で覆いますが、そもそも頭が上に出にくい、「ひとみ五寸」や「冬越黒田五寸」だと越冬も楽ですし、雪解けした翌春に、甘みが増した新鮮な人参を収穫することが出来ます!。私的には、色や形だけでなく味もよい、「ひとみ五寸」がおすすめ。
【連作障害】
セリ科の野菜はあまり連作を気にする必要はありませんが、1~2年は空けた方が無難です。夏まき栽培では、タイミング的にジャガイモを作り終えた場所で栽培するようにすれば、追肥も不要です。
【病害虫】
人参は、ほとんど病害虫の心配はなく、作りやすい野菜です。ただ、土の中で育つ野菜なので過湿には弱く、水捌けの悪い土壌で秋の長雨が続くと、根腐れが発生することがあります。逆に、盛夏に水枯れが続くと、実割れや根曲りの原因になってしまうので、ご注意あれ。
また、人参の葉が茂ってくると、キアゲハが卵を産み付けます。えらく葉っぱが少ないなと気が付くと、そこには緑色をした巨大なモスラの幼虫が!(驚)、なんてことも。まぁ、図体が大きいので、すぐに見つかりますから、「手でトール」しておきましょう(笑)。

 2.種まき、間引き

根野菜は、排水・保水性の良い肥沃な砂質系の土壌を好みますが、人参は強い野菜なので、ほとんど気にする必要はありません。深めに耕し、根割れの原因になるような小石を拾っておきましょう。肥料もそれほど必要としないため、前作で肥料食いのジャガイモを育てた場所なら、基肥は不要です。弱酸性から中性土を好みますが、酸性が強すぎると著しく生育が滞り、根割れが発生しますので、石灰は適宜施しましょう。

【播種の適期】
春まき栽培では、暖かくなってから遅くても3月末まで。それ以降に芽が出たのでは、生育盛りの頃には暑くなってしまい、うまく育ちません。
夏まき栽培では、寒冷地では7月初旬から7月末まで、温暖地では7月中下旬から8月中頃までが、種まきの適期。この期間に種を蒔いて順調に生育すれば、寒くなる前に肥大し、霜が降りるまに収穫して、春まで貯蔵することが出来ます。冬でも零下にならない暖地なら、遅蒔きして、冬の間中、収穫し続けることも可能です。一方、長野県の様に雪の降るような地域では、遅蒔きすると、冬になって生育が止まる前までに、肥大化が間に合いません。その場合は、土寄せをして人参を頭を土の中に埋めて冬越し、春になってからの成長を待ち、収穫します。しかし、冬越しした人参は直ぐに塔が立ち、芯が出来て食べられなくなってしまうので、あまり遅くまでは収穫できません。
人参の種まき・収穫時期
 
【土壌・施肥】
排水・保水性の良い肥沃な砂質系の土壌を好みますが、さほど土質は選びません。PH 5.5~6.5の弱酸性でよく育ちますが、5以下になると生育は著しく滞ります。基肥として堆肥と苦土石灰を施し、深めに耕しておきますが、前作でジャガイモを育てた場所であれば、肥料がたっぷり入っているはずなので、基肥は不要です。
【種まき】
ニンジン栽培では、発芽が上手く行ったら7~8割方は成功と思えるほど、「芽出し」が重要です。深めに耕したら少々高畝にし、条間20cmで、種を筋蒔きします。
人参の種のまき方ニンジンの発芽を成功させるポイントは、光と水です!。ニンジンの種子は好光性なので、覆土は極薄くし、芽が出揃うまで絶対に土を乾かさないことが重要。そのため、梅雨末期の雨続きのタイミングに種まきができれば、最高です。しかし、覆土を薄く蒔いた種が、大雨で流されたのでは、元も子もありません。そこで、種まきの1週間くらい前までに畝を立て、一雨当てることで、土を少し固めます。丸棒の支柱などを使って、浅く蒔き溝を作ったら、じょろで十分灌水してから、ニンジンの種を1cm位の間隔で筋蒔きします。上に、極薄く土をかけますが、何なら覆土しなくてもいいくらいです。乾燥防止に、鶏糞を薄くかけたり、もみ殻を撒く裏ワザ(?)を、私はおすすめします(笑)。その上から、手かクワで、軽く鎮圧し、種を濡れた土によく馴染ませましょう。暑くなる時期なので、日差しが強い場合は、新聞紙などをかけて、乾燥防止に努めます。雨降りが続けば不要ですが、発芽するまでには、1週間から10日間もかかります(汗)。

発芽が成功すれば、後は間引きと草取りをするだけです。

人参の間引き葉が込み合ってきたら、都度間引きを行い、最終的に株間が10cm位になるようにします。本当か嘘か、『”競り”ながら成長するから、”セリ科”』なんだとか!?(笑)。つまりニンジンは、隣の株と葉が触れ合うことで成長が促進される様で、あまり小さいうちに間引きしてはいけません。葉が込み合ってきてから、都度、間引きを繰り返します。ただし、か細いニンジンの葉は、成長の早い草には負けてしまうので、雑草は早め早めに抜かなければいけません!。

間引いた小さな人参は、丸ごとそのまま、彩野菜として料理に使えます。また、若い人参の葉は苦味が少なく、葉っぱまで頂くことが出来ます。特に、山野草の季節に採れる春まきした人参の若葉は、春の風物詩としてしばしば俳句に登場するなど、珍重がられたりします。ただし、私はあまり沢山は要りません(笑)。

 3.収穫、貯蔵

収穫

土の表面に出ている人参の頭の太さを見て、収穫の頃合いを計ります。収穫が遅れると、根割れ(実割れ)の原因になりますので、食べる分を早め早めに試し掘りしながら、収穫時期を見極めましょう。

なお、夏の極短な水枯れも、根割れの原因になります。また、変形の原因としては、土中あった小石や、残った肥料の塊、害虫による食害などが考えられます。


貯蔵

収穫した人参は、葉を切り落とし、軽く洗うか土を落とした状態で、ビニール袋に入れ、米袋や段ボール箱、寒い地域では発泡スチロールの容器などに入れ、土蔵や物置、床下などで貯蔵します。寒さに強いニンジンは、春先まで貯蔵できますが、乾燥させ過ぎないことと、凍らせないことが重要です。あまり湿気が多いと、温度が上がる春先にはカビが生えますので、ご注意あれ。


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