ネギの育て方

都会からリタイアして地元の田舎に戻り始めた家庭菜園、少しずつ学んだ野菜の育て方のコツをまとめてみました。

 1.ネギ栽培のキモとコツ

ネギとは

ネギ(葱)は、何やら学術上は難しい分類に含まれるようですが、ネギ属の一種で、日本では大きく分けて、下仁田ネギや深谷ねぎに代表される、根元の軟白部分を主に食べる「根深ねぎ(長ネギ)」と、九条葱やワケネギ(分けつネギ)に代表される、主に葉の部分を食べる「葉ねぎ(青ネギ)」とに分類されます。長野県内では、「松本一本ねぎ」(一本太ねぎ)という根深ねぎの品種が、とても多く流通しています。土地や気候に合っているのでしょうね。なお、関東以北では「根深ねぎ」が、関西以西では「葉ねぎ」が一般的に多く流通していますが、当地で栽培されるネギは、松本一本太ねぎに代表される根深ねぎ(長ネギ)が主流なので、こちらを中心に紹介します。

【品種】
「根深ねぎ」も「葉ねぎ」も、種類はとても豊富です。柔らかい・甘い、早生・晩生、耐病性・耐暑性・耐寒性、夏取り・冬取り、さらに太さも・長さも様々。あまりに多すぎて、違いもよく分かりません(汗)。
いろいろな品種を試してみるのもいいですし、うまく組み合わせて長い期間収穫するのもいいですが、夏にネギが沢山採れても・・・(汗)。一般的には、当地での「松本一本ねぎ」の様に、それぞれの土地で昔から多く栽培されてきた品種が、そこの気候や風土に合っていて、作りやすいと思います。ただし、我が家の畑のように土が硬いと土寄せ作業が大変なので、軟白部の長い松本一本ねぎより、軟白部が太くて短い「下仁田ネギ」の方が、土寄せが少なく作りやすいです(笑)。
【連作障害】
一般にネギ類は、連作の影響を受けにくい野菜です。キュウリやスイカなど、ウリ科の野菜のコンパニオンプランツとして知られており、キュウリの種を蒔いたり定植する時は、一緒に株元に、撤去する10月頃に収穫できるネギを移植しておくと良いです。
【病害虫】
ネギのさび病さび病やべと病、黒斑病などの病気が発生することがあります。一番多く発生しやすいのが赤さび病です。植え付けの時に、根元にワラや積んでおいた落葉、半熟堆肥などをかけると、アブラムシや赤さび病の予防になるそうで、私は毎年実践しているのですが、やはり赤さびは発生してしまいます(汗)。
さび病は、春と秋の長雨が続くと、発生しやすくなるウイルス性の病気です。株まわりの枯れた下葉は、出来るだけ早めに取り除き、圃場外へ廃棄しましょう。農薬に頼るのであれば、被害が広まると薬剤が効きにくくなってしまうので、早めに殺菌剤を散布します。我が家で常備している殺菌剤は、安いダコニール。効きを高めたい時は、ちょっとお高いストロビーを使っています。

 2.種まき

長ネギ(根深ねぎ)は、一般的に秋まき・年内収穫と、春まき・年明け収穫という2つの作柄シーズンがあります。しかし、長野県のように冷涼な地域であれば、秋まき栽培だけで年内から翌春まで収穫することも可能ですし、ネギの収穫は鍋が始まる12月以降でよければ、春まき栽培だけで済ますことも可能です。

ただし、ネギの栽培は、植え替え作業と、特に一本太ねぎのように軟白部が長い根深ねぎは、土寄せ作業が大変。春まき栽培だと、植え替えが、7月の一番暑い盛りの作業となるため、できれば避けたいところです。しかし逆に、秋まき栽培だと、栽培期間が長くなるので、草取り作業が余計にかかるのが難点。どっちもどっちですね(汗)。

一方、春に株分けする分けつ種のワケネギ(分けつネギ)は、秋に定植し、翌年の春から夏にかけて収穫します。

【気象環境】
発芽・生育適温は、15~25度。30度以上で成長は衰え、5度以下で生育は止まりますが、耐寒性は強く、マイナス8度までは耐えられます。マイナス10度を下回る寒地でも、雪の下に潜ってしまえば、越冬は可能。弱い日照にも、よく耐えます。
寒冷地では、秋まき栽培が、温暖地では春まき栽培がおすすめ。もちろん、越冬できない極寒地を除けば、品種を変えて両方栽培することで、より長い期間収穫できますよ。
【播種の適期】
葉ねぎは、種まきから60~70日で収穫できますので、暖地であれば春先から夏まで種まきし、順番に収穫することができますし、秋まきで越冬させ翌春に収穫することも可能です。
さて本題の長ネギ(根深ねぎ)ですが、播種(種まき)の時期は、春まきは3月中旬から4月、秋まきは9月下旬から10月中旬(寒冷地)~11月上旬(温暖地)です。
種まきと収穫時期
 
【土壌・施肥】
土壌はあまり選びませんが、多湿には弱いので、排水性のよい場所を選びます。「曲がりネギ」は全国各地にありますが、仙台の曲がりネギが特に有名。地下水位が高い仙台では、深植え出来ず、また植えっぱなしでもよいネギが育ちません。そこで何回か、ネギを横倒しにして植え直します。するとネギは、上へ上へと起き上がりながら、曲がって成長しますが、その時にネギにかかるストレスで、ネギは甘く柔らかくなると言われています。
【種まき】
タマネギに準じます。種1袋で、約1~1.5坪ほどの広さの苗床(蒔き床)を作ります。排水の悪い畑では、畝を立ててください。一般的に野菜の苗作りでは、無肥料の培土に種を蒔きますが、育苗期間の長いネギ類では、種まきの1~2週間前に、石灰と堆肥を漉き込んだ蒔き床を作りましょう。
種の蒔き方は、ばら蒔きも可能ですが、間引きや草取り作業が手間になるので、すじ蒔きがおすすめ。5~10cm間隔の蒔き溝を作り、十分灌水してから、種を5mm~1cm間隔で蒔いていきます。
ネギの苗床ネギの種子発芽は、嫌光性です。しかし、覆土が厚いと発芽し難くなってしまいます。5mmくらい薄く覆土し、軽く鎮圧したら、灌水後、新聞紙や稲わら、寒冷紗を掛けて、遮光と乾燥防止を図ります。
発芽するまでの日数は、気温や覆土の厚さにもよりますが、5日~1週間ほど。発芽が揃うまでの10日間ほどは、必ず毎日灌水します。ただ、新聞紙は毎日の散水時に剥ぐのが面倒だし、藁は散らかるし、寒冷紗は汚れます。そこで私は、雑草対策も兼ねて、覆土した上に、鶏糞と籾殻(もみがら)を撒いています!。
なお、ネギの種は短命なので、買った種はその年に使い切り、余っても、翌年はケチらず新しい種を買いましょう。もちろん絶対に発芽しない分けではないので、発芽したらラッキー程度で蒔いてみるのはアリです。また、ネギは固定種が多いので、全部収穫してしまわずに畑に数本残してネギ坊主の花を咲かしておけば、5月下旬から6月上旬には種を自家採種することが出来ます!。

 3.育て方

春まきした苗の定植時期は、6月から7月の暑い時期。また、寒冷地で秋まきした苗も、一旦4月に定植しますが、8月の暑い最中にもう一回植え直すことで、甘みと柔らかさとが増すそうです。しかし、この暑い時期の植え替え作業は、殊のほか大変。とは言え、この時期はネギの畝間は草でボウボウのはず。草取りを兼ねて植え直すか、草取りだけしてそのままにしてしまうか、悩みどころです(汗)。

この夏の植え替えに合せて、掘り起こしたネギを縛って、1~2週間ほど風通しのより軒下に吊るしておくと、乾燥への耐性が高まり、病害虫の発生も抑制され、成長がよくなると言われています。

【定植】
秋に種まきしたネギ苗の定植適期は4月、春に種まきしたネギ苗の定植適期は6月~7月、遅くても8月上旬位までです。本葉が3~4枚付き、長さは30cmくらい、太さはエンピツより一回り太いくらい、色のハッキリした苗を選んで定植します。小さい苗は大きな苗に負けてしまうので、苗の大きさを揃えたいところですが、小さい苗も勿体ないので、サイズ毎に畝を分けて植えてもいいですね!。
深さ15cm~30cmの植え溝を掘ります。排水性のよい畑であれば、土寄せの手間を省くために、深植えも可能。柔らかい土であれば、あえて耕うんせずに溝を掘った方が、壁が崩れずに、掘る土の量が少なくて済みます。我が家の畑のように、硬くて排水性があまりよくない粘土質の土の場合は、深植えは厳禁も、土寄せするのも大変なので、よく耕うんしてから定植するしかありません(汗)。
ネギの畝株間は、7cm~10cm。この時、ネギの苗をよく見ると、ネギの葉は、左右に並んで付いているのが分かります。ネギの葉は、その方向にしか展開しないので、その向きを揃えて苗を植えると、その後の管理が楽になります。畝の向きに対して、45度の方向に斜めに揃えて植えると、隣の株と葉が重ならず、株間も畝間も狭められ、密植が可能。かつ、土寄せ作業も楽です。
ネギ苗の植え方ネギ苗を、植え溝の片側の壁に寄せて立て、根本に土を掛けます。ネギは成長に多くの酸素(空気)を必要としますので、定植時は、根が隠れるぐらいの浅植えとし、絶対に深植えしない様にします。しかし、浅植えしたままだと苗が倒れてしまうので、植え溝に、稲ワラや籾殻、落葉、半熟堆肥などを入れて苗が倒れないように押さえ、風に飛ばされない様に上から軽く土を掛けておきます。半熟堆肥を根元に入れておくと、赤さび病などの発生予防も期待できるそうです!。

【土寄せと追肥】
定植から一カ月おきに、土寄せと追肥を行います。土寄せする高さは、葉が分岐している部分まで。
植え替えから1月も過ぎると、トウ立ちし、ネギ坊主が出はじめます。トウ立ちすると成長の妨げになるので、見つけたら早めに摘み取ってしまいます。花が開く前に摘んだネギ坊主は、天ぷらや炒め物、味噌汁の具にして、美味しく頂けます。

収穫

秋から冬にかけて収穫期を迎えますが、1~2回は霜にあてた方が甘みを増します。

温暖地では、畑に植えたまま、必要な量を都度収穫してもいいですが、雪の降る当地だと、雪の下からネギを掘るのは大変。そこで、雪の降る前に収穫し、天日で乾かした後に、土蔵や倉庫に入れ貯蔵します。しかし全部は掘らず、春先まで食べられるように、ひと月分くらいは畑に残します。雪が溶けてきたら、順番に掘り起こして、収穫します。

暖かくなりだすと、急速にネギは固くなり、芯が出来てしまいます。そうなりだしたら、一旦全部掘り起し、畑を掘って新聞紙を敷き、ネギを横に寝かせて積み上げ、土をかけておきます。そうすれば、もう暫くは食べることができますが、そうは長く持ちません(汗)。

なお、自家採種する場合は、全部収穫してしまわず、畑に数本残して、葱坊主の花を咲かせましょう!。

種取り

ネギは、在来種・固定種が多いので、自家採種しやすい野菜のひとつです。

葱坊主4月になると、長ネギには芯が出来て、硬くなって食べられなくなります。残っていても、そのまま耕耘して処分してしまいますが、自家採種する場合は、数本だけ残しておきます。すると、5月にはネギ坊主が大きくなり、小さな花をいっぱい咲かせます。そして、そのままにしておけば、5月下旬か6月上旬には種が採れますよ。たった1個のネギ坊主から、商売が出来るほど沢山の種が採れますが、種集めが手間なので、数本残しておくと楽です。

5月下旬から6月上旬ごろ、ネギ坊主を覗くと、黒い種が沢山出来ているのが分かります。種を包んでいる薄皮が白く乾燥し、種が熟すと、指で突いたくらいで、種が飛び散ります。そうなったら、種取りをしましょう。ビニールシートか、新聞紙を広げて、その上で切り取ったネギ坊主を叩くと、種がいっぱい飛び散って、シートの上に落ちます。一緒に、花柄や小さな虫もいっぱい落ちて、混ざってしまいますが、シートを揺らしたり、団扇で煽ったりすることで、花柄や虫を避けて、黒い種だけ集めることが出来ます。種だけ集めたら、数時間から数日、陽の下に広げてよく乾燥させたら、虫がいなくなったことを確認してから紙封筒などに入れて、秋か翌年春の種まきまで保存します。私は面倒なので、広げた新聞紙でそのまま包んでレジ袋に入れ、畑の納屋に吊るしておきます。その代わり、種まきする時に、『あれ、どこに置いたっけ?』と忘れがちですが…(笑)


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