【直木賞2020】候補作・受賞作 紹介

令和2年度の直木三十五賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。

※ 2020年度の芥川龍之介賞の候補作・受賞作は、【芥川賞2020】のページへ!

 2020年下半期 直木賞

候補作 一覧

第164回(2020年下半期)直木賞にノミネートされたのは、6作品。候補者全員が初のノミネートで、直木賞候補作が全て初候補者で占められたのは、実に25年ぶりのことです。候補者の一人、歌手で俳優・タレントでもある、アイドルグループ「NEWS」メンバーの加藤シゲアキ(33)氏は、2012年に小説『ピンクとグレー』(角川文庫)で小説家デビュー。芥川賞にノミネートされた、ロックバンド「クリープハイプ」メンバーの尾崎世界観(36)氏とともに、芸能界で注目を集めました。

そして直木賞に選ばれたのは、西條奈加さんの『心淋(うらさび)し川』でした。

西條さいじょう奈加なかさんプロフィールは、北海道池田町出身の56歳。高校まで北海道で過ごし、都内の英語専門学校を卒業後に貿易会社に勤めながら執筆活動。2005年に『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞大賞を受賞しデビュー。2012年に『涅槃の雪』で中山義秀文学賞を、2015年に『まるまるの毬』で吉川英治文学新人賞を受賞。直木賞は初のノミネートでの受賞です。受賞作の『心淋うらさびし川』は、江戸時代、根津権現の裏手にある心町(うらまち)と呼ばれる貧乏長屋に住む人々を描いた人情もの時代小説の連作集。不美人な妾ばかりを同じ長屋に4人も囲っている青物卸の大隅屋六兵衛、そこから話は意外な方向に転がり、最後は長屋の秘密が明らかになる…。


第164回直木賞 候補作一覧
 

汚れた手をそこで拭かない」(文藝春秋)
芦沢央
 

八月の銀の雪」(新潮社)
伊与原新
 

オルタネート」(新潮社)
加藤シゲアキ
直木賞 受賞

心淋(うらさび)し川」(集英社)
西條奈加
 

インビジブル」(文藝春秋)
坂上泉
 

アンダードッグス」(KADOKAWA)
長浦京

候補作紹介(内容、あらすじ)

汚れた手をそこで拭かない

著者:芦沢あしざわよう

平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。元不倫相手を見返したい料理研究家……始まりは、ささやかな秘密。気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。

取り扱い注意! 研ぎ澄まされたミステリ5篇からなる、傑作独立短編集。(文藝春秋)

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八月の銀の雪

著者:伊与原いよはらしん

不愛想で手際が悪い――。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。(新潮社)

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オルタネート

著者:加藤かとうシゲアキしげあき

高校生限定のマッチングアプリが必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、3人の若者の運命が、鮮やかに加速していく――。恋とは、友情とは、家族とは、人と“繋がる”とは何か。悩み、傷つきながら、〈私たち〉が「世界との距離をつかむまで」を端正かつエモーショナルに描く。著者3年ぶり、渾身の新作長編。(新潮社)

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心淋うらさびし川(受賞作)

著者:西條さいじょう奈加なか

江戸、千駄木町の一角に流れる「心淋し川(うらさびしがわ)」。その小さく淀んだ川のどん詰まりに建ち並ぶ、古びた長屋に暮らす人々が物語の主人公です。

青物卸の大隅屋六兵衛は、一つの長屋に不美人な妾を四人も囲っている。その一人、一番年嵩で先行きに不安を覚えていたおりきは、六兵衛が持ち込んだ張方をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして……(「閨仏(ねやぼとけ)」)。

裏長屋で飯屋を営む与吾蔵は、仕入れ帰りに立ち寄る根津権現で、小さな唄声を聞く。かつて、荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が手酷く捨ててしまった女がよく口にしていた、珍しい唄だった。唄声の主は小さな女の子供。思わず声をかけた与吾蔵だったが――(「はじめましょ」)ほか、全六話を収録。

生きる喜びと生きる哀しみが織りなす、感動の時代連作。ぜひ一話ずつじっくりと味わってください。(集英社)

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インビジブル

著者:坂上さかがみいずみ

昭和29年、大阪城付近で政治家秘書が頭に麻袋を巻かれた刺殺体となって見つかる。大阪市警視庁が騒然とするなか、若手の新城は初めての殺人事件捜査に意気込むが、上層部の思惑により国警から派遣された警察官僚の守屋と組むはめに。帝大卒のエリートなのに聞き込みもできない守屋に、中卒叩き上げの新城は厄介者を押し付けられたといら立ちを募らせる――。(文藝春秋)

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アンダードッグス

著者:長浦ながうらきょう

「君の選択肢に『No』はない。『Si(はい)』でなければ『morte(死)』だ」――1996年末、元官僚の証券マン・古葉慶太は、顧客の大富豪・マッシモからある計画を託される。それは、中国返還直前の香港から密かに運び出される国家機密を強奪せよというものだった。かつて政争に巻き込まれ失脚した古葉は、逆襲の機会とばかりに香港へ飛ぶ。だが、彼を待っていたのは、国籍もバラバラな“負け犬”仲間たちと、計画を狙う米露英中、各国情報機関だった――。裏切るか、見破るか。策謀の渦巻く香港を“負け犬”たちが駆け抜ける!(KADOKAWA)

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 2020年上半期 直木賞

候補作 一覧

第163回(2020年上半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。著者5人のうち、馳星周(55)氏は、2016年上半期以来となる7度目の候補入り。他にも、澤田瞳子(42)氏は4度目、伊吹有喜(51)氏は3度目、今村翔吾(36)氏は2度目の候補入りと常連組が多く、初ノミネートは遠田潤子(54)氏のみ。

そして直木賞に選ばれたのは、馳星周さんの『少年と犬』でした。

はせ星周せいしゅうさんプロフィールは、北海道浦河町出身の55歳。横浜市立大学を卒業後、書評家などを経て、1996年に『不夜城』で小説家デビュー。この作品は、日中混血の男女2人が新宿歌舞伎町に暗躍する中国人マフィアの抗争に巻き込まれるという内容で第116回直木賞候補に選ばれ、以後、1998年に『夜光虫』、1999年に『M』、2003年に『生誕祭』、2007年に『約束の地で』、2015年に『アンタッチャブル』でと、これまで6回直木賞候補に選ばれ、7度目で受賞となりました。受賞作の『少年と犬』は、2011年の東日本大震災を釜石で被災した犬と少年が、5年後に熊本で再開するまでを描いた物語。飼い主と離ればなれになった犬の”多聞”が、飼い主を探して北から南へと旅するなかで、さまざまな人々との出会いと別れを繰り返し、九州を目指します。


第163回直木賞 候補作一覧
 

雲を紡ぐ」(文藝春秋)
伊吹有喜


じんかん」(講談社)
今村翔吾
 

能楽ものがたり 稚児桜」(淡交社)
澤田瞳子
 

銀花の蔵」(新潮社)
遠田潤子
直木賞 受賞

少年と犬」(文藝春秋)
馳星周

候補作紹介(内容、あらすじ)

雲を紡ぐ

著者:伊吹いぶき有喜ゆき

「分かり合えない母と娘」。壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか? 羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。

いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだった。ところが、このショールをめぐって、母と口論になり、少女は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。実は、とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていた――。(文藝春秋)

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じんかん

著者:今村いまむら翔吾しょうご

仕えた主人を殺し、天下の将軍を暗殺し、東大寺の大仏殿を焼き尽くすーー。民を想い、民を信じ、正義を貫こうとした」青年武将は、なぜ稀代の悪人となったか?

時は天正五年(1577年)。ある晩、天下統一に邁進する織田信長のもとへ急報が。信長に忠誠を尽くしていたはずの松永久秀が、二度目の謀叛を企てたという。前代未聞の事態を前に、主君の勘気に怯える伝聞役の小姓・狩野又九郎。だが、意外にも信長は、笑みを浮かべた。やがて信長は、かつて久秀と語り明かしたときに直接聞いたという壮絶な半生を語り出す。

貧困、不正、暴力…。『童の神』で直木賞候補となった今最も人気の若手歴史作家が、この世の不条理に抗う人すべてへ捧ぐ、圧巻の歴史巨編!(講談社)

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能楽ものがたり 稚児桜

著者:澤田さわだ瞳子とうこ

わが国最高峰の舞台芸術として受け継がれてきた能楽。長年、能に親しんできた著者が名曲にインスパイアされて生み出した8編の時代小説集。

3「稚児桜」―清水寺の稚児としてたくましく生きる花月。ある日、自分を売り飛ばした父親が突然面会に現れて……。(原曲『花月』)(淡交社)

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銀花の蔵

著者:遠田とおだ潤子じゅんこ

大阪万博に沸く日本。絵描きの父と料理上手の母と暮らしていた銀花は、父親の実家に一家で移り住むことになる。そこは、座敷童が出るという言い伝えの残る由緒ある醤油蔵の家だった。家族を襲う数々の苦難と一族の秘められた過去に対峙しながら、少女は大人になっていく――。圧倒的筆力で描き出す、感動の大河小説。(新潮社)

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少年と犬(受賞作)

著者:はせ星周せいしゅう

傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった――。

2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……。犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!(文藝春秋)

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【関連ページ掲載】
※ これまで、「本屋大賞・芥川賞・直木賞」の全受賞作を、一覧(リスト)にしていましたが、あまりに数が多くなってしまったので、各賞を切り出した、それぞれのページを作りました。
→ 【芥川賞】 歴代受賞作|全作品一覧
  → 芥川賞 歴代ノミネート作一覧
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