令和5年度の直木三十五賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。
※ 2023年上半期の第169回直木賞の受賞作が決定しました!。
※ 2023年度の芥川龍之介賞の候補作・受賞作は、【芥川賞2023】のページへ!
第169回(2023年上半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。5名の作者うち、「機龍警察」シリーズで知られる月村了衛さんが初めて候補に選ばれたほか、高野和明さんと永井紗耶子さんは2度目、冲方丁さんと垣根涼介さんは3度目の候補入りとなりました。なお、永井紗耶子さんの話題作『木挽町のあだ討ち』は、先に第三十六回山本周五郎賞を受賞しています。
そして直木賞に選ばれたのは、垣根涼介さん(57)の『極楽征夷大将軍』と、永井紗耶子さん(46)の『木挽町のあだ討ち』の2作品。垣根さんは3度目、永井さんは2度目の芥川賞候補入りで受賞となりました。
垣根涼介(かきね りょうすけ)さんは、1966年長崎県諫早市生まれで、筑波大学に入学し上京。大学を卒業後、旅行代理店などを経て小説を書き始め、2000年に勤務経験をもとに執筆した『午前三時のルースター』でデビューしました。受賞作は、鎌倉幕府を倒して室町幕府を樹立し征夷大将軍となった足利尊氏の生涯を、やる気も使命感も執着もない無欲の人物という独自の解釈で描いた歴史小説。周囲から「極楽殿」とからかわれていた尊氏の不思議な求心力や、意図せず将軍に上り詰めた背景を、陰の立て役者である弟や家臣の視点から、史実に基づき丁寧に書き上げています。
永井紗耶子(ながい さやこ)さんは、1977年静岡県島田市生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業し、新聞社勤務を経てフリーのライターとなり、2010年に時代小説『絡繰り心中』で小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。受賞作は、江戸の芝居小屋を舞台に父を殺された若侍のあだ討ちをめぐる物語を描いた時代小説。複雑な過去を背負いながら、芝居に生きる人たちがそれぞれの目線で語るあだ討ちのてんまつを通して隠された真相が描かれる、人情味あふれる物語です。
「骨灰」(KADOKAWA) 冲方丁 |
芥川賞 受賞 「極楽征夷大将軍」(文藝春秋) 垣根涼介 |
「踏切の幽霊」(文藝春秋) 高野和明 |
「香港警察東京分室」(小学館) 月村了衛 |
芥川賞 受賞 「木挽町のあだ討ち」(新潮社) 永井紗耶子 |
著者:冲方 丁
あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ
大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。(KADOKAWA)
著者:垣根 涼介
史上最も無能な征夷大将軍、やる気なし、使命感なし、執着なし、なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?
混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。(文藝春秋)
著者:高野 和明
マスコミには決して書けないことがある――
都会の片隅にある踏切で撮影された、一枚の心霊写真。同じ踏切では、列車の非常停止が相次いでいた。雑誌記者の松田は、読者からの投稿をもとに心霊ネタの取材に乗り出すが、やがて彼の調査は幽霊事件にまつわる思わぬ真実に辿り着く。
1994年冬、東京・下北沢で起こった怪異の全貌を描き、読む者に慄くような感動をもたらす幽霊小説の決定版!(文藝春秋)
著者:月村 了衛
テロリストを追え! 圧巻の国際警察小説。
香港国家安全維持法成立以来、日本に流入する犯罪者は増加傾向にある。国際犯罪に対応すべく日本と中国の警察が協力する――インターポールの仲介で締結された「継続的捜査協力に関する覚書」のもと警視庁に設立されたのが「特殊共助係」だ。だが警察内部では各署の厄介者を集め香港側の接待役をさせるものとされ、「香港警察東京分室」と揶揄されていた。メンバーは日本側の水越真希枝警視ら5名、香港側のグレアム・ウォン警司ら5名である。
初の共助事案は香港でデモを扇動、多数の死者を出した上、助手を殺害し日本に逃亡したキャサリン・ユー元教授を逮捕すること。元教授の足跡を追い密輸業者のアジトに潜入すると、そこへ香港系の犯罪グループ・黒指安が襲撃してくる。対立グループとの抗争に巻き込まれつつもユー元教授の捜索を進める分室メンバー。やがて新たな謎が湧き上がる。なぜ穏健派のユー教授はデモを起こしたのか、彼女の周囲で目撃された謎の男とは。疑問は分室設立に隠された真実を手繰り寄せる。そこにあったのは思いもよらぬ国家の謀略だった――。
アクションあり、頭脳戦あり、個性豊かなキャラクターが躍動する警察群像エンタテイメント!(小学館)
著者:永井 紗耶子
ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は多くの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者という侍が仇討ちの顛末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。現代人の心を揺さぶり勇気づける令和の革命的傑作誕生!(新潮社)
2023年下半期、第170回直木三十五賞(直木賞)の候補作は 2023年12月15日頃に、直木賞受賞作は 2024年1月15日頃に発表される予定です。