【直木賞2023】候補作・受賞作 紹介

令和5年度の直木三十五賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。

 

 
※ 2023年下半期の第170回直木賞の受賞作が決定しました!。新着記事、最新記事
※ 2023年度の芥川龍之介賞の候補作・受賞作は、【芥川賞2023】のページへ!

 2023年下半期 直木賞

候補作 一覧

第170回(2023年下半期)直木賞にノミネートされたのは、6作品。著者6人のうち、嶋津輝(54)氏と村木嵐(56)氏は初の候補入り。加藤シゲアキ(36)氏と河﨑秋子(44)氏が2度目、宮内悠介(44)氏が4度目(芥川賞では2回)、万城目学(47)氏が6度目の候補入りです。加藤シゲアキ氏はアイドルグループ「NEWS」のメンバーで、2012年に『ピンクとグレー』で作家デビュー。NEWSのメンバーとして活動しながら作家として執筆を続け、2020年に『オルタネート』が第164回直木賞にノミネートされました(第42回吉川英治文学新人賞受賞、第8回高校生直木賞を受賞)。

そして直木賞に選ばれたのは、河崎秋子(かわさき あきこ)さん(44)の『ともぐい』と、万城目学(まきめ まなぶ)さん(47)の『八月の御所グラウンド』の2作品。河崎さんは2度目、万城目さんは6度目の直木賞候補入りでの受賞です。

河崎秋子さんは、北海道出身の44歳。大学を卒業後、酪農を営む実家で働きながら執筆活動を始め、三浦綾子文学賞を受賞した『颶風の王』で35歳の時にデビュー。昨年、『絞め殺しの樹』で第167回直木賞候補にも選ばれました。受賞作の『ともぐい』は、日露戦争の足音が聞こえる明治後期の北海道を舞台に、人里離れた山の中でひとり野生の動物を撃って暮らす猟師の物語です。どう猛なクマと猟師との命をめぐる激しいせめぎ合いが臨場感あふれる迫力ある文章で描かれ、人間的な暮らしと獣たちの生きざまの間で揺れ動く猟師の生涯が自然描写豊かに描かれています。

万城目学さんは、大阪府出身の47歳、京都大法学部卒。京都を舞台に学生たちが躍動する青春ファンタジー小説『鴨川ホルモー』で、2006年に30歳でデビュー。第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した同作は、後に漫画化・実写映画化もされました。その後も何作もの小説がテレビドラマ化、映画化、コミック化された他、舞台化もされた大人気作家です。これまで直木賞にノミネートされたのは、『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』『とっぴんぱらりの風太郎』『悟浄出立』の5作品。今回直木賞を受賞した『八月の御所グラウンド』は、デビュー作以来16年ぶりとなる京都を舞台とした小説。友人につき合って草野球大会に出場した男子大学生が、死んだはずの名選手らしき人物に出会い共にプレーに興じるという、時空を超えたファンタジーな万城目ワールドが叙情的に描かれています。


第170回直木賞 候補作一覧
 

なれのはて」(講談社)
加藤シゲアキ
 
直木賞 受賞

ともぐい」(新潮社)
河崎秋子
 
 

襷がけの二人」(文藝春秋)
嶋津輝
 
直木賞 受賞

八月の御所グラウンド」(文藝春秋)
万城目学
 
 

ラウリ・クースクを探して」(朝日新聞出版)
宮内悠介
 
 

まいまいつぶろ」(幻冬舎)
村木嵐
 

候補作紹介(内容、あらすじ)

なれのはて

著者:加藤かとう シゲアキ

ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員・守谷京斗(もりや・きょうと)は、異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)から、祖母に譲り受けた作者不明の不思議な絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談を受ける。しかし、絵の裏には「ISAMU INOMATA」と署名があるだけで画家の素性は一切わからない。二人が謎の画家の正体を探り始めると、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた業に繋がっていた。

1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。 芸術が招いた、意図しない悲劇。 暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。 長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。(講談社)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

ともぐい(受賞作)

著者:河﨑かわさき秋子あきこ

明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河崎流動物文学の最高到達点!!(新潮社)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

襷がけの二人

著者:嶋津しまずてる

裕福な家に嫁いだ千代と、その家の女中頭の初衣。 「家」から、そして「普通」から逸れてもそれぞれの道を行く。

「千代。お前、山田の茂一郎君のとこへ行くんでいいね」-- 親が定めた縁談で、製缶工場を営む山田家に嫁ぐことになった十九歳の千代。 実家よりも裕福な山田家には女中が二人おり、若奥様という立場に。 夫とはいまひとつ上手く関係を築けない千代だったが、 元芸者の女中頭、初衣との間には、仲間のような師弟のような絆が芽生える。

やがて戦火によって離れ離れになった二人だったが、 不思議な縁で、ふたたび巡りあうことに……(文藝春秋)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

八月の御所グラウンド(受賞作)

著者:万城目まきめまなぶ

女子全国高校駅伝――都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。
謎の草野球大会――借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。
京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとは--

今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない。 青春の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る感動作2篇(文藝春秋)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

ラウリ・クースクを探して

著者:宮内みやうち悠介ゆうすけ

1977年、エストニアに生まれたラウリ・クースク。コンピュータ・プログラミングの稀有な才能があった彼は、ソ連のサイバネティクス研究所で活躍することを目指す。だがソ連は崩壊し……。歴史に翻弄された一人の人物を描き出す、かけがえのない物語。(朝日新聞出版)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

まいまいつぶろ

著者:村木むらきらん

暗愚と疎まれた将軍の、比類なき深謀遠慮に迫る。口が回らず誰にも言葉が届かない、歩いた後には尿を引きずった跡が残り、その姿から「まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれ馬鹿にされた君主。第九代将軍・徳川家重。しかし、幕府の財政状況改善のため宝暦治水工事を命じ、田沼意次を抜擢した男は、本当に暗愚だったのか――? 廃嫡を噂される若君と後ろ盾のない小姓、二人の孤独な戦いが始まった。

第12回 日本歴史時代作家協会賞作品賞、第13回 本屋が選ぶ時代小説大賞 受賞。(幻冬舎)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

 2023年上半期 直木賞

候補作 一覧

第169回(2023年上半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。5名の作者うち、「機龍警察」シリーズで知られる月村了衛さんが初めて候補に選ばれたほか、高野和明さんと永井紗耶子さんは2度目、冲方丁さんと垣根涼介さんは3度目の候補入りとなりました。なお、永井紗耶子さんの話題作『木挽町のあだ討ち』は、先に第三十六回山本周五郎賞を受賞しています。

そして直木賞に選ばれたのは、垣根涼介さん(57)の『極楽征夷大将軍』と、永井紗耶子さん(46)の『木挽町のあだ討ち』の2作品。垣根さんは3度目、永井さんは2度目の芥川賞候補入りで受賞となりました。

垣根涼介(かきね りょうすけ)さんは、1966年長崎県諫早市生まれで、筑波大学に入学し上京。大学を卒業後、旅行代理店などを経て小説を書き始め、2000年に勤務経験をもとに執筆した『午前三時のルースター』でデビューしました。受賞作は、鎌倉幕府を倒して室町幕府を樹立し征夷大将軍となった足利尊氏の生涯を、やる気も使命感も執着もない無欲の人物という独自の解釈で描いた歴史小説。周囲から「極楽殿」とからかわれていた尊氏の不思議な求心力や、意図せず将軍に上り詰めた背景を、陰の立て役者である弟や家臣の視点から、史実に基づき丁寧に書き上げています。

永井紗耶子(ながい さやこ)さんは、1977年静岡県島田市生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業し、新聞社勤務を経てフリーのライターとなり、2010年に時代小説『絡繰り心中』で小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。受賞作は、江戸の芝居小屋を舞台に父を殺された若侍のあだ討ちをめぐる物語を描いた時代小説。複雑な過去を背負いながら、芝居に生きる人たちがそれぞれの目線で語るあだ討ちのてんまつを通して隠された真相が描かれる、人情味あふれる物語です。


第169回直木賞 候補作一覧
 

骨灰」(KADOKAWA)
冲方丁
 
芥川賞 受賞

極楽征夷大将軍」(文藝春秋)
垣根涼介
 
 

踏切の幽霊」(文藝春秋)
高野和明
 
 

香港警察東京分室」(小学館)
月村了衛
 
芥川賞 受賞

永井紗耶子
木挽町のあだ討ち」(新潮社)
 

候補作紹介(内容、あらすじ)

骨灰

著者:冲方うぶかたとう

あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ

大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。(KADOKAWA)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

極楽征夷大将軍(受賞作)

著者:垣根かきね涼介りょうすけ

史上最も無能な征夷大将軍、やる気なし、使命感なし、執着なし、なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?

混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。(文藝春秋)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

踏切の幽霊

著者:高野たかの和明かずあき

マスコミには決して書けないことがある――

都会の片隅にある踏切で撮影された、一枚の心霊写真。同じ踏切では、列車の非常停止が相次いでいた。雑誌記者の松田は、読者からの投稿をもとに心霊ネタの取材に乗り出すが、やがて彼の調査は幽霊事件にまつわる思わぬ真実に辿り着く。

1994年冬、東京・下北沢で起こった怪異の全貌を描き、読む者に慄くような感動をもたらす幽霊小説の決定版!(文藝春秋)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

香港警察東京分室

著者:月村つきむら了衛りょうえ

テロリストを追え! 圧巻の国際警察小説。

香港国家安全維持法成立以来、日本に流入する犯罪者は増加傾向にある。国際犯罪に対応すべく日本と中国の警察が協力する――インターポールの仲介で締結された「継続的捜査協力に関する覚書」のもと警視庁に設立されたのが「特殊共助係」だ。だが警察内部では各署の厄介者を集め香港側の接待役をさせるものとされ、「香港警察東京分室」と揶揄されていた。メンバーは日本側の水越真希枝警視ら5名、香港側のグレアム・ウォン警司ら5名である。
初の共助事案は香港でデモを扇動、多数の死者を出した上、助手を殺害し日本に逃亡したキャサリン・ユー元教授を逮捕すること。元教授の足跡を追い密輸業者のアジトに潜入すると、そこへ香港系の犯罪グループ・黒指安が襲撃してくる。対立グループとの抗争に巻き込まれつつもユー元教授の捜索を進める分室メンバー。やがて新たな謎が湧き上がる。なぜ穏健派のユー教授はデモを起こしたのか、彼女の周囲で目撃された謎の男とは。疑問は分室設立に隠された真実を手繰り寄せる。そこにあったのは思いもよらぬ国家の謀略だった――。

アクションあり、頭脳戦あり、個性豊かなキャラクターが躍動する警察群像エンタテイメント!(小学館)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

木挽町のあだ討ち(受賞作)

著者:永井ながい紗耶子さやこ

ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は多くの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者という侍が仇討ちの顛末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。現代人の心を揺さぶり勇気づける令和の革命的傑作誕生!(新潮社)

ネットで注文amazon  ネットで注文楽天ブックス

 

【関連ページ掲載】
※ これまで、「本屋大賞・芥川賞・直木賞」の全受賞作を、一覧(リスト)にしていましたが、あまりに数が多くなってしまったので、各賞を切り出した、それぞれのページを作りました。
→ 【芥川賞】 歴代受賞作|全作品一覧
  → 芥川賞 歴代ノミネート作一覧
→ 【直木賞】 歴代受賞作|全作品一覧
  → 直木賞 歴代ノミネート作一覧
→ 【本屋大賞】 歴代受賞作|全作品一覧
  → 本屋大賞 歴代の大賞受賞作一覧

▲ページTOPへ