令和5年度の芥川龍之介賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。
※ 2023年上半期の第169回芥川賞の受賞作が決定しました!。
※ 2023年度の直木三十五賞の候補作・受賞作は、【直木賞2023】のページへ!
第169回(2023年上半期)芥川賞にノミネートされたのは、5作品。5名の作者うち、市川沙央さん、ハロー!プロジェクト(ハロプロ)など数々の楽曲を手掛ける作詞家でもある児玉雨子さんが初の候補入り、石田夏穂さんは2度目、哲学者の千葉雅也さんは3度目、乗代雄介さんは4度目の候補入りとなりました。
そして芥川賞に選ばれたのは、市川沙央さん(43)の『ハンチバック』。市川沙央(いちかわ さおう)さんは、1979年神奈川県生まれ。これまでライトノベルの作品を20年以上創作してきましたが、初めて挑んだ純文学の本作で文學界新人賞を受賞してデビュー、そして初めての芥川賞候補入りで受賞に至りました。
市川さんは、10歳のころに難病の筋疾患である先天性ミオパチーと診断され、今は移動には電動車いすを使用していますが常に人工呼吸器が必要で、執筆にはタブレット端末を使っているそうです。この物語の主人公は、市川さんと同じ重い障害がある女性。右の肺を押しつぶす形で背骨が曲がり、人工呼吸器やたんの吸引器など医療機器に頼らざるを得ない生活を克明につづる一方、健常者の暮らしに向けられる辛辣な皮肉などをユーモラスに表現した作品です。受賞記者会見に望んだ市川さんは、重度障害者が作家として活躍できる道を拓きたかったこと、そして書籍の電子化など読書バリアフリーへの取り組みを進めて欲しい事などを訴えました。
「我が手の太陽」(群像 5月号) 石田夏穂 |
芥川賞 受賞 「ハンチバック」(文學界 5月号) 市川沙央 |
「##NAME##(ネーム)」(文藝 夏季号) 児玉雨子 |
「エレクトリック」(新潮 2月号) 千葉雅也 |
「それは誠」(文學界 6月号) 乗代雄介 |
著者:石田 夏穂
第59回文藝賞受賞。衝撃のデビュー作!
鉄鋼を溶かす、太陽と同レベルの高温の火を扱う溶接作業は、どの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達したトップ溶接工だ。鉄鋼を溶かす間、伊東は滅多に瞬きしない。息も最小限に殺す。火が鉄板を貫通すると、その切り口が上下に破かれ初め、切断面から動脈血にも似た火花が、ただただ無尽蔵に散る。ーーそんな伊東が突然、スランプに陥った。
いま文学界が最も注目する才能が放つ前代未聞の職人小説。工事現場の花、腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。その峻烈なる生きざまを見よ!(講談社)
著者:市川 沙央
私の身体は、生き抜いた時間の証として破壊されていく、「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす--。(文藝春秋)
著者:児玉 雨子
光に照らされ君といたあの時間を、ひとは”闇”と呼ぶ――。かつてジュニアアイドルの活動をしていた雪那。少年漫画の夢小説にハマり、名前を空欄のまま読んでいる。(河出書房新社)
著者:千葉 雅也
性のおののき、家族の軋み、世界との接続――。『現代思想入門』の哲学者が放つ、待望の最新小説!
1995年、雷都・宇都宮。高2の達也は東京に憧れ、広告業の父はアンプの製作に奮闘する。父の指示で黎明期のインターネットに初めて接続した達也は、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みる。轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。(新潮社)
著者:乗代 雄介
生の輝きを捉えた芥川賞候補作、いま最も期待を集める作家の最新中編小説。
修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、えも言われぬ感動がこみ上げる名編。(文藝春秋)
2023年下半期、第170回芥川龍之介賞(芥川賞)の候補作は 2023年12月15日頃に、芥川賞受賞作は 2024年1月15日頃に発表される予定です。