平成29年度の直木三十五賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。
※ 2017年度の芥川龍之介賞の候補作・受賞作は、【芥川賞2017】のページへ!
第157回(2017年上半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。そして直木賞に選ばれたのは、佐藤正午さんの『月の満ち欠け』でした。
は、長崎県佐世保市出身の51歳。北海道大学文学部在学中に小説を書き始め、中退後は佐世保に戻って20代後半に書いた長編小説『永遠の1/2』が、1983年の第7回すばる文学賞を受賞し作家デビュー。2015年に『鳩の撃退法』で第6回山田風太郎賞を受賞。直木賞にノミネートされたのは今回が初めて。受賞作の『月の満ち欠け』は、生まれ変わりを繰り返す女性と、彼女と関わる家族や恋人の人生模様を、ミステリー仕立てで描いた長編小説。ありえない話に説得力を持たせる巧みな語り口の、奇想天外な愛の物語です。
「敵の名は、宮本武蔵」 木下昌輝 |
「会津執権の栄誉」 佐藤巖太郎 |
直木賞 受賞 「月の満ち欠け」 佐藤正午 |
「あとは野となれ大和撫子」 宮内悠介 |
「BUTTER」 柚木麻子 |
著者:木下 昌輝
数々の剣客を斃し、最強と呼ばれた宮本武蔵。戦った剣豪たちは、彼に何を見たのか。島原沖田畷の戦いで“童殺し”の悪名を背負い、家中を追放された鹿島新当流の達人・有馬喜兵衛の前に、宮本無二斎と、弁助と呼ばれる十二、三歳の子供が現れた。弁助、のちの武蔵は、真剣で「生死無用」の果し合いをするというのだが……(「有馬喜兵衛の童討ち」)。全7篇の物語で紡ぐ、まったく新しい宮本武蔵の物語。(KADOKAWA)
著者:佐藤 巖太郎
狙いはただひとつ。伊達政宗の馘(くび)――。
四百年の長きにわたり会津を治めながら、相次ぐ当主の早世で嫡流の男系が途絶えた芦名家。常陸の佐竹家より新たな当主として婿養子を迎えたものの、家中に軋轢が生じ、北からは伊達政宗の脅威が迫る。芦名家の行方は家臣筆頭の金上盛備の双肩にかかっており、ついに伊達との摺上原での最終決戦を迎えた。
東北の名家の存亡を描き、直木賞候補となった出色のデビュー作。本屋が選ぶ時代小説大賞2017受賞!(文藝春秋)
著者:佐藤 正午
あたしは,月のように死んで,生まれ変わる――目の前にいる,この七歳の娘が,いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の,三十余年におよぶ人生,その過ぎし日々が交錯し,幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! 新たな代表作の誕生は,円熟の境に達した畢竟の書き下ろし。さまよえる魂の物語は戦慄と落涙,衝撃のラストへ。(岩波書店)
著者:宮内 悠介
沙漠の小国家、アラルスタン。日本人少女ナツキは紛争で両親を失い、国の教育機関“後宮”に引き取られることに。同じ境遇の仲間と気楽な日々を過ごしていたが、大統領が暗殺され情勢は一変。国の中枢のほとんどが逃亡、反政府軍が襲来する絶体絶命の危機に陥ってしまった!ナツキは仲間の立ち上げた臨時政府に参加し、自分たちの居場所を守るために奮闘するが……。
どんな困難も笑い飛ばして明日に進む、乙女たちの青春冒険ストーリー!(KADOKAWA)
著者:柚木 麻子
男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ――。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。(新潮社)
第158回(2017年下半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。人気ロックバンド「SEKAI NO OWARI」のメンバーで主にピアノを担当している藤崎彩織さん(31)の初小説『ふたご』がノミネートされたことで注目が集まりましたが、直木賞に選ばれたのは、門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』でした。
は、群馬県桐生市生まれ、栃木県宇都宮市出身の46歳。同志社大学文学部を卒業後、6年間ほど大学職員として働いたのち、執筆に専念。2003年に『キッドナッパーズ』で第42回オール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2015年に『東京帝大叡古教授』で第153回直木賞候補に、2016年に『家康、江戸を建てる』で第155回直木賞候補に選ばれ、今回が3回目のノミネート。受賞作の『銀河鉄道の父』は、宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描いた作品。賢治のごく普通の青年としての一面や、これまで語られることが無かった賢治の父・宮沢政次郎の生き方などを通じて、新鮮な親子愛が読者の感動を誘います。
著者:彩瀬 まる
別れた男の片腕と暮らす女。運命で結ばれた恋人に会うと体に咲くという花。幻想的な世界がリアルに浮かび上がる繊細で鮮烈な短篇集。
直木賞候補&第五回高校生直木賞受賞の傑作短篇集(文藝春秋)
著者:伊吹 有喜
平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――
戦前、戦中、戦後という激動の時代に、情熱を胸に生きる波津子とそのまわりの人々を、あたたかく、生き生きとした筆致で描く、著者の圧倒的飛躍作。(実業之日本社)
著者:門井 慶喜
政次郎の長男・賢治は、適当な理由をつけては金の無心をするような困った息子。政次郎は厳格な父親であろうと努めるも、賢治のためなら、とつい甘やかしてしまう。やがて妹の病気を機に、賢治は筆を執るも――。天才・宮沢賢治の生涯を父の視線を通して活写する、究極の親子愛を描いた傑作。(講談社)
著者:澤田 瞳子
時は天平――。藤原氏が設立した施薬院の仕事に、嫌気が差していた若き官人・蜂田名代だったが、高熱が続いた後、突如熱が下がる不思議な病が次々と発生。それこそが、都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせる“疫神(天然痘)”の前兆であった。我が身を顧みず、治療に当たる医師たち。しかし混乱に乗じて、病に効くというお札を民に売りつける者も現われて……。
第158回直木賞と第39回吉川英治文学新人賞にWノミネートされた、「天平のパンデミック」を舞台に人間の業を描き切った傑作長編。(PHP研究所)
著者:藤崎 彩織
「お前の居場所は、俺が作るから。泣くな」
ピアノだけが友達の孤独な少女の夏子は、異彩の少年・月島と出会い、振り回され、傷付きながらもその側にいようとする。やがて月島は唐突に「バンドをやる」と言い出した。彼は、夏子の人生の破壊者でも創造者でもあった。
大切な人を大切にすることが、こんなに苦しいなんて--。異彩の少年に導かれた孤独な少女。その苦悩の先に見つけた確かな光。直木賞候補となった鮮烈なデビュー小説。(文藝春秋)