平成30年度の直木三十五賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。
※ 2018年度の芥川龍之介賞の候補作・受賞作は、【芥川賞2018】のページへ!
第159回(2018年上半期)直木賞にノミネートされたのは、6作品。そして直木賞に選ばれたのは、島本理生さんの『ファーストラヴ』でした。
は、東京都出身の35歳。小学生のころから小説を書き始め、17歳にして、第44回群像新人文学賞の優秀作に『シルエット』が選ばれ作家デビュー。19歳で、『リトル・バイ・リトル』が第128回(2002年下半期)芥川賞候補に選ばれ、同作品で第25回野間文芸新人賞を史上最年少で受賞。以来、2003年に『生まれる森』が第130回芥川賞候補に、2006年に『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補に、2011年に『アンダスタンド・メイビー』が第145回直木賞候補に、2015年に『夏の裁断』が第153回芥川賞候補にと、(今回を含め)これまで芥川賞で4回、直木賞で2回もノミネートされています。受賞作の『ファーストラヴ』は、就職活動中の女子大生が逮捕され、面接の帰りに父親を殺害したとされる事件に材を取り、ノンフィクション執筆を依頼された臨床心理士が、家族像や人間模様の複雑さを浮かび上がらせる長編作です。
「破滅の王」 上田早夕里 |
「宇喜多の楽土」 木下昌輝 |
「じっと手を見る」 窪美澄 |
直木賞 受賞 「ファーストラヴ」 島本理生 |
「傍流の記者」 本城雅人 |
「未来」 湊かなえ |
著者:上田 早夕里
1943年、魔都・上海。ひとりの科学者の絶望が産みだした治療法皆無の細菌兵器。その論文は分割され、英・仏・独・米・日の大使館に届けられた。手を取り合わなければ、人類に待っているのは、破滅。世界大戦のさなかに突きつけられた究極の選択に、答えはでるのか?(双葉社)
著者:木下 昌輝
戦国を駆け抜けた心やさしき俊才の生涯
父・直家の跡を継ぎ豊臣政権の覇者となった宇喜多秀家。関が原で壊滅し、八丈島で長い生涯を閉じるまでを描き切った傑作長編。(文藝春秋)
著者:窪 美澄
大切な人を、帰るべき場所を、私たちはいつも見失う――。読むほどに打ちのめされる! 忘れられない恋愛小説 富士山を望む町で介護士として働く日奈と海斗。老人の世話をし、ショッピングモールだけが息抜きの日奈の生活に、ある時、東京に住む宮澤が庭の草を刈りに、通ってくるようになる。生まれ育った町以外に思いを馳せるようになる日奈。一方、海斗は、日奈への思いを断ち切れぬまま、同僚と関係を深め、家族を支えるためにこの町に縛りつけられるが……。(幻冬舎)
著者:島本 理生
夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。(文藝春秋)
著者:本城 雅人
優秀な記者ばかりがそろった黄金世代。しかし、社会部長になれるのはひとりだけだった。生き残っているのは得意分野が違う五人の男。部下の転職や妻との関係、苦悩の種に惑いながら出世レースは佳境を迎えるが、会社が倒れかねない大スキャンダルが男たちを襲う。組織を守るか、己を守るか、それとも正義をとるか。勝つのは、誰だ?(新潮社)
著者:湊 かなえ
「こんにちは、章子。私は20年後のあなた、30歳の章子です。あなたはきっと、これはだれかのイタズラではないかと思っているはず。だけど、これは本物の未来からの手紙なのです」
ある日突然、少女に届いた一通の手紙──。家にも学校にも居場所のない、追い詰められた子どもたちに待つ未来とは!? デビュー作『告白』から10年、湊ワールドの集大成となる長編ミステリー。(双葉社)
第160回(2018年下半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。そして直木賞に選ばれたのは、真藤順丈さんの『宝島』でした。
は、東京都出身の41歳。映画監督を志して映像関係の仕事に携わるかたわら小説の執筆を始め、後に小説に専念。30歳になって4つの新人賞を相次いで受賞し、作家デビュー。推理小説から歴史小説、ホラーやファンタジー小説など、ジャンルにとらわれない幅広い作品を手がけ、直木賞候補に選ばれたのは今回が初めて。受賞作の『宝島』は、戦後から本土返還までの沖縄を舞台に、幼なじみ3人の奮闘をふんだんに方言を使った語り口で描いた物語です。
「童の神」 今村翔吾 |
「信長の原理」 垣根涼介 |
直木賞 受賞 「宝島」 真藤順丈 |
「ベルリンは晴れているか」 深緑野分 |
「熱帯」 森見登美彦 |
著者:今村 翔吾
「世を、人の心を変えるのだ」「人をあきらめない。それが我々の戦いだ」――平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛……などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人から蔑まれていた。一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。そして遂に桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むが――。差別なき世を熱望し、散っていった者たちへの、祈りの詩。(角川春樹事務所)
著者:垣根 涼介
織田信長は、幼少時から孤独と、満たされぬ怒りを抱えていた。家督を継ぎ、戦に明け暮れていた信長はある日、奇妙な法則に気づく。どんなに鍛え上げた兵団でも、働きが鈍る者が必ず出る。その比率は、幼い頃に見た蟻と同じだ。人間も、蟻と同じなのか……と。信長は周囲の愚かさに苛立ちながらも、軍事・経済の両面で戦国の常識を次々と打破。怒濤の血戦を制してゆく。不変の“法則”と史実が融合した革新的エンタテインメント!(KADOKAWA)
著者:真藤 順丈
英雄を失った島に新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染みーーグスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり、同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!(講談社)
著者:深緑 野分
1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4ヵ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり――ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。(筑摩書房)
著者:森見 登美彦
どうしても「読み終えられない本」がある――。その名も『熱帯』。
この本を探し求める作家の森見登美彦はある日、〈沈黙読書会〉なる催しでふしぎな女性に出会う。彼女は言った「あなたは、何もご存じない」と。『熱帯』の秘密を解き明かすべく組織された〈学団〉と、彼らがたどり着いた〈暴夜書房〉。東京・有楽町からはじまった物語は、いつしか京都、さらには予想もしなかった地平へと突き進む。(文藝春秋)