令和7年度の直木三十五賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。
※ 2025年下半期の第174回直木賞の候補作が発表されました!
※ 2025年上半期の第173回直木賞の選考会が開催され、今回は「該当作なし」と決定されました!
※ 2025年度の芥川龍之介賞の候補作・受賞作は、【芥川賞2025】のページへ!
第174回(2025年下半期)直木賞にノミネートされたのは、5作品。今回は直木賞も芥川賞も共に5人中4人が初めてのノミネートとなりました。嶋津輝さんは第170回直木賞候補に選ばれた『襷がけの二人』以来2回目の候補入りです。
今回の芥川賞・直木賞の選考委員会は、2026年1月14日(水)午後に東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、夜には選考結果が発表される予定です。
「カフェーの帰り道」(東京創元社) 嶋津輝 |
「白鷺立つ」(文藝春秋) 住田祐 |
「神都の証人」(講談社) 大門剛明 |
「家族」(文藝春秋) 葉真中顕 |
「女王様の電話番」(集英社) 渡辺優 |
著者:嶋津 輝
東京・上野の片隅にある、あまり流行(はや)っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。(東京創元社)
著者:住田 祐
玉照院の師弟は〝やんごとなき秘密〟を抱えていた――
天明飢饉の傷痕いまだ癒えぬ比叡山延暦寺に、失敗すれば死といわれる〈千日回峰行〉を成し遂げようとする二人の仏僧がいた。 歴史に名を残すための闘いは、やがて業火となり叡山を飲み込んでいく。(文藝春秋)
著者:大門 剛明
昭和18年。戦時下、「神都」と称される伊勢で、弁護士の吾妻太一は苦悩していた。官憲による人権侵害がはびこり、司法は死んだも同然。弁護士は正業にあらずと、子どもたちにさえ蔑まれていた。
だが、一人の少女・波子との出会いが、吾妻の運命を変える。彼女の父は、一家惨殺事件で死刑判決を受けた囚人だった。
「お父ちゃんを助けて」
波子の訴えを受け、吾妻は究極の手段に打って出る。無罪の証拠を得るため、自らも犯罪者として裁かれる覚悟をして――。だがそれは、長い戦いの始まりに過ぎなかった。(講談社)
著者:葉真中 顕
2011年11月3日、裸の女性が交番に駆け込み、「事件」が発覚した。奥平美乃(おくだいら・みの)と名乗るその女性は、半年と少し前、「妹夫婦がおかしな女にお金をとられている」と交番に相談に来ていたが、「民事不介入」を理由に事件化を断られていた。
奥平美乃の保護を契機として、表に出た「死」「死」「死」…… 彼女を監禁していた「おかしな女」こと夜戸瑠璃子(やべ・るりこ)は、自らのまわりに疑似家族を作り出し、その中で「躾け」と称して監禁、暴行を主導。何十年も警察に尻尾を?まれることなく、結果的に十三人もの変死に関わっていた。
出会ってはならない女と出会い、運命の糸に絡めとられて命を落としていく人々。 瑠璃子にとって「家族」とはなんだったのか。そして、「愛」とは。
「民事不介入」に潜む欠陥を日本中に突きつけた「尼崎連続変死事件」をモチーフとした、戦慄のクライムエンターテイメント!(文藝春秋)
著者:渡辺 優
主人公の志川は、新卒で就職した不動産会社を辞め、現在、SMの女王様をデリバリーするお店の電話番をしている。友達には「そんな職業は辞めたら?」と眉をひそめられたが、女王様の中でも美織さんという最高に素敵な人に出会い、そこそこ幸せに暮らしていた。
ある日、あこがれの美織さんと初めてごはんを食べに行く約束をして舞い上がるものの、当日にドタキャン。そのまま音信不通になってしまう。彼女の常連のお客さんなどにこっそり連絡を取り行方を探るうちに、どうも自分の知っている美織さんとは違う面ばかりが見えてきて……。
過去、志川が不動産会社を辞めた理由は、あこがれの男性社員・星先輩と付き合う寸前に、先輩が自分に求めている性的なことが一切無理だと気づいたからだった。好きだったのに。付き合えないと正直に言っただけで、志川は同僚に悪女扱いをされ、そのまま会社にもいづらくなり、退社することになってしまったのだ。
私はアセクシャルなのだろうか? 「ない」ことを証明するのは、悪魔の証明だ。もしかしたら、まだ見ぬピンクのひつじに会えるかもしれないのに……。なんでも性的なことや恋愛に結びつける世の中に馴染めない主人公の戸惑いを通じて、現代社会を描く問題作。(集英社)
第173回(2025年上半期)直木賞にノミネートされたのは、6作品。6名の作者うち、複数の作品が映画やドラマ化され人気の柚月裕子(57)さんは3度目、逢坂冬馬(39)さんと芦沢央(41)さんは2度目のノミネート。青柳碧人(44)さん、新聞記者から作家に転身した塩田武士(46)さん、そして最年少となる夏木志朋(36)さんは初の候補入りです。
そして2025年7月16日(水)に日本文学振興会は第173回(2025年上半期)芥川賞・直木賞の選考会を都内で開催し、両賞とも『該当作なし』と決定されました。両賞とも“該当作なし”となったのは1998年の第118回以来、27年ぶりの異常事態です…。
「ブレイクショットの軌跡」(早川書房) 逢坂冬馬 |
「乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO」(新潮社) 青柳碧人 |
「嘘と隣人」(文藝春秋) 芦沢央 |
「踊りつかれて」(文藝春秋) 塩田武士 |
「Nの逸脱」(ポプラ社) 夏木志朋 |
「逃亡者は北へ向かう」(新潮社) 柚月裕子 |
著者:逢坂 冬馬
底が抜けた社会の地獄で、あなたの夢は何ですか?
自動車期間工の本田昴は、Twitterの140字だけが社会とのつながりだった2年11カ月の寮生活を終えようとしていた。最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトをひとつ車体の内部に落とすのを目撃する。見過ごせば明日からは自由の身だが、さて……。以降、マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽、そしてSNSの混沌と「アフリカのホワイトハウス」――移り変わっていくブレイクショットの所有者を通して、現代日本社会の諸相と複雑なドラマが展開されていく。人間の多様性と不可解さをテーマに、9つの物語の「軌跡」を奇跡のような構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作。(早川書房)
著者:青柳 碧人
大学の先輩後輩、江戸川乱歩と杉原千畝。まだ何者でもない青年だったが、夢だけはあった。希望と不安を抱え、浅草の猥雑な路地を歩き語り合い、それぞれの道へ別れていく……。若き横溝正史や巨頭松岡洋右と出会い、新しい歴史を作り、互いの人生が交差しつつ感動の最終章へ。「真の友人はあなただけでしたよ」──泣ける傑作。(新潮社)
著者:芦沢 央
ストーカー化した元パートナー、マタハラと痴漢冤罪、技能実習制度と人種差別、SNSでの誹謗中傷・脅し……。
リタイアした元刑事の平穏な日常に降りかかる事件の数々。
身近な人間の悪意が白日の下に晒された時、捜査権限を失った男・平良正太郎は、事件の向こうに何を見るのか?(文藝春秋)
著者:塩田 武士
首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にももう一つの爆弾が落とされていた。ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。
ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。
言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
彼らを追いつめたもの、それは――。(文藝春秋)
著者:夏木 志朋
何気なく開けてしまった隣人の扉、「フツウ」の奥に隠されていたものは――。始まりは日常からの小さな「逸脱」だった――。自ら仕掛けた罠が次々と思いがけぬ修羅場を呼び込んでいく隣人たちの3つの物語。
爬虫類のペットショップでアルバイトをする金本篤は、売れ残ったフトアゴヒゲトカゲが処分されそうになるのを見て、店長に譲ってくれと頼む。だが、提示された金額はあまりに高額で手が出ない。「ある男」を強請って金を得ようと一計を案じるのだが、自ら仕掛けた罠が思いがけぬ結末を呼び込んでしまう……「場違いな客」、ほか。
追う者と追われる者が入れ替わり、善と悪が反転していく予測不可能な展開――隣の人たちが繰りひろげる3つの物語。(ポプラ社)
著者:柚月 裕子
震災直後に殺人を犯し、死刑を覚悟しながらもある人物を探すため姿を消した青年・真柴亮。刑事の陣内康介は津波で娘を失いながらも容疑者を追う。ふたりはどこへ辿り着くのか──。『孤狼の血』『盤上の向日葵』の著者が地元・東北を舞台に描く震災クライムサスペンス。(新潮社)