令和6年度の芥川龍之介賞において、候補作として選考にノミネートされた全小説の一覧です。
※ 2024年下半期の第172回芥川賞の受賞作が決定しました!。
※ 2024年度の直木三十五賞の候補作・受賞作は、【直木賞2024】のページへ!
第172回(2024年下半期)芥川賞にノミネートされたのは、5作品。初めてノミネートされたのはデビュー2作目で最年少の鈴木結生さん(23)と、永方佑樹さんと竹中優子さん(42)は詩人や歌人としての実績を有しています。また、上期に続き候補となった安堂ホセさん(30)はデビュー作から3作連続で3回目、乗代雄介さん(38)は5回目の候補入りです。
そして芥川龍之介賞に選ばれたのは、安堂ホセさんの『DTOPIA』と、鈴木結生さんの『ゲーテはすべてを言った』の2作品。安堂さんは3回目、鈴木さんは初めての候補での受賞です。
安堂ホセさんは、東京都出身の30歳。受賞作『DTOPIA』は、世界各地から集められた10人の男性がミスユニバースの白人女性を射止めようと競い合う「恋愛リアリティー番組」を舞台にした物語です。
もうひとりの鈴木結生さんは、福島県出身の23歳。受賞作『ゲーテはすべてを言った』は、文豪ゲーテを研究する男性教授が“ことば”とは何かと思索を深めていく過程を描いた物語です。
芥川賞 受賞![]() 「DTOPIA」(文藝 秋季号) 安堂ホセ |
芥川賞 受賞![]() 「ゲーテはすべてを言った」(小説トリッパー 秋季号) 鈴木結生 |
![]() 「ダンス」(新潮 11月号) 竹中優子 |
![]() 「字滑り」(文學界 10月号) 永方佑樹 |
![]() 「二十四五」(群像 12月号) 乗代雄介 |
著者:安堂 ホセ
恋愛リアリティショー「DTOPIA」新シリーズの舞台はボラ・ボラ島。ミスユニバースを巡ってMr.LA、Mr.ロンドン等十人の男たちが争う──時代を象徴する圧倒的傑作、誕生!(河出書房新社)
著者:鈴木 結生
高明なゲーテ学者、博把統一は、一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出会う。
ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求めて、膨大な原典を読み漁り、長年の研究生活の記憶を辿るが……。
ひとつの言葉を巡る統一の旅は、創作とは何か、学問とは何か、という深遠な問いを投げかけながら、読者を思いがけない明るみへ誘う。若き才能が描き出す、アカデミック冒険譚!(朝日新聞出版)
著者:竹中 優子
同じ部署の三人が近頃欠勤を繰り返し、その分仕事が増える私はイライラが頂点に。ある日、三人のうちの一人、先輩女性の下村さんから、彼らの三角関係を知らされる。恋人を取られたのに弱っているのか開き直っているのか分からない下村さんの気ままな「ダンス」に翻弄される私は、いったいどうすれば――新潮新人賞受賞作。(新潮社)
著者:永方 佑樹
永方さんは東京都出身、慶應義塾大学大学院博士前期課程修了の文学修士で、詩人。2012年に第21回詩と思想新人賞を受賞、2019年に詩集『不在都市』で歴程新鋭賞を受賞。
文字ベースの詩作に留まらず、水などの自然物やテクノロジーを使用し、詩を立体的に立ち上げる独自の立体詩を国内外で展開。またJR西日本きのくに線「紀の国トレイナート」や奥大和「MIND TRAIL」等にも参加、社会やアートとリンクした活動も行なう。(ウィキペディアより)
2024年、初の中編小説『字滑り』を「文學界 2024年10月号」に発表。
著者:乗代 雄介
喪失を抱えたまま生きていく、祈りの記録。ロングセラー『旅する練習』の著者がはなつ待望の新作。
「これは、叔母がどんなに私を思ってくれていたかということを、その死後も巧妙なやり方で繰り返しほのめかされ時には泣かされたところでぴんぴんしている、根深い恨みである。」
実家を出て二年、作家になった二十四五の私は弟の結婚式に参列するため、仙台に向かっている。五年前に亡くなった叔母の痕跡を求めて、往復する時間の先にあるものとは。(講談社)
第171回(2024年上半期)芥川賞にノミネートされたのは、5作品。ロックバンド「クリープハイプ」の尾崎世界観さん(39)が『転の声』(文學界6月号)で、2020年下半期(第164回)にノミネートされた『母影』(新潮12月号)以来、3年半ぶり2度目の候補となりました。尾崎さん以外の4人は全員が初の芥川賞候補で、久々にフレッシュな顔ぶれとなりました。
そして芥川龍之介賞に選ばれたのは、朝比奈秋さんの『サンショウウオの四十九日』と、松永K三蔵さんの『バリ山行』の2作品。二人とも初めての芥川賞ノミネートでの受賞です。
朝比奈秋さんは、京都府出身の43歳。医学部を卒業後に消化器内科の医師として働きながら執筆を始め、2021年に『塩の道』(私の盲端に併録)で林芙美子文学賞を受賞し小説家としてデビューしました。受賞作『サンショウウオの四十九日』は、全身が半分づつ結合して生まれ、外見からは1人に見える「結合双生児」の2人の女性の物語です。医師としての経験と驚異の想像力で人生の普遍が描かれています。
もうひとり『バリ山行』で芥川賞を受賞した松永K三蔵さんは44歳で、茨城県で生まれて幼い頃に兵庫県西宮市に移り住み、中学生のときから小説を書き始めました。大学卒業後、建築関係の会社に勤務するかたわら小説を書き、2021年に『カメオ』で文芸誌の新人賞を受賞しデビューしています。受賞作は、勤め先が経営難に陥りリストラへの不安を募らせる会社員の男性が主人公で、ある日同じくリストラ候補と囁かれる先輩について険しい登山に挑むことに。決死の思いで険しい谷を越える体験を通して、自らの生き方を問い直す心の動きが臨場感あふれる描写で描かれています。
芥川賞 受賞![]() 「サンショウウオの四十九日」(新潮 5月号) 朝比奈秋 |
![]() 「転の声」(文學界 6月号) 尾崎世界観 |
![]() 「海岸通り」(文學界 2月号) 坂崎かおる |
![]() 「いなくなくならなくならないで」(文藝 夏季号) 向坂くじら |
芥川賞 受賞![]() 「バリ山行」(群像 3月号) 松永K三蔵 |
著者:朝比奈 秋
周りからは一人に見える。でも私のすぐ隣にいるのは別のわたし。不思議なことはなにもない。けれど姉妹は考える、隣のあなたは誰なのか? そして今これを考えているのは誰なのか――三島賞受賞作『植物少女』の衝撃再び。最も注目される作家が医師としての経験と驚異の想像力で人生の普遍を描く、世界が初めて出会う物語。(新潮社)
著者:尾崎 世界観
「俺を転売して下さい」喉の不調に悩む以内右手はカリスマ”転売ヤー”に魂を売った? ミュージシャンの心裏を赤裸々に描き出す。(文藝春秋)
著者:坂崎 かおる
踊る、それがわたしたちの自由
海辺の老人ホームに集う女たちのゆるやかなつながり。いま最も注目される新鋭の最新作。
「これってフツー?」
「わたしの中じゃね」
「クズミさんのフツー、ちょっとヘン」(本文より)
海辺の老人ホーム「雲母園」で派遣の清掃員として働くわたし、クズミ。ウガンダから来た同僚マリアさん。サボりぐせのある元同僚の神崎さん。ニセモノのバス停で来ないバスを毎日待っている入居者のサトウさん。
さまざまな人物が、正しさとまちがい、本物とニセモノの境をこえて踊る、静かな物語。(文藝春秋)
著者:向坂 くじら
死んだはずの親友・朝日からかかってきた一本の電話。時子はずっと会いたかった彼女からの連絡に喜ぶが、「住所ない」と話す朝日が家に住み着き――。
デビュー作にして第171回芥川賞候補作。(河出書房新社)
著者:松永K三蔵
古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して2年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る気楽な活動をしていたが、職人気質で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿に、危険で難易度の高い登山「バリ山行」に連れて行ってもらうと……。
「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか! 本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ! 生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げているだけじゃないですか!」(本文より抜粋)(講談社)